童心 ページ21
銀「お、やっと来たか」
店主のおじさんがおぼんの上にみたらし団子を二皿持って厨房から出てきた瞬間、銀ちゃんの目はまるで子供が大好物の食べ物を見た時みたいに輝いた。甘いものが絡む時の銀ちゃんは童心に帰るらしい。いや、いつもそんな感じだったかもしれない。
…でも、いつも見せる顔とはまた違っていて、なんだか新鮮だ。こんな顔もするんだ、って。
そんな銀ちゃんの様子に自然と笑みが溢れてきてしまう。
店「いやいや、悪いね。なんだかいい雰囲気だったのに…」
銀「あ?誰が」
店「なぁに、はぐらかしたって無駄だよ銀さん、あんな見せつけられちゃったらよォ〜」
銀「何また勘違いしてんだハゲ。んなことばっか考えてっから髪が死滅するんだよハゲ」
「銀ちゃんそろそろいい加減にして本当に」
これ以上そのおじさんをディスるのはやめてあげてほしい。ハゲをイジルとはやめてあげてほしい。ツケ払わない上にハゲハゲ言われちゃ堪ったもんじゃないだろう。未だニヤついたままのおじさんが逆に怖いよ。仏の笑顔が心なしか黒く見えてくるよ。
店「ったく……若いってのはいいねェ…」
銀「ああもうわかったから、さっさと仕事戻れよ」
俺も若い頃は……とでも語り出しそうだったおじさんを銀ちゃんは手でしっしっとしながらそう言った。それに「んじゃ、ごゆっくり〜」と残して去って行った。最後まで笑顔のままだったよ。あのおじさん。ハート強いな。
銀「…たく、じゃ食うか」
首あたりをぼりぼりとかきながら呟いた銀ちゃんのその目にはもう団子しか映っていないだろう。期待に満ち溢れた顔をしている。
私もそれにうん、と返し、目の前に置かれたみたらしの串に手を伸ばす。タレがてかてかしてて美味しそうだ。
「みたらし久しぶりだな…」
最後に食べたのは数ヵ月前、現実世界でお姉ちゃんと食べて以来だ。お姉ちゃんがいなくなってからは食べてなかったから、暫く食べていなかった。なんだか懐かしい気持ちになる。
銀「いっただっきまーす」
みたらし片手に感傷に浸っていれば、目の前の天パはマイペースにもう団子を食べ始めようとしていて、少しの寂しさを振り払うように私も「いただきます」を告げて団子をパクリとした。
銀「どーだ?」
もぐもぐとしていれば、銀ちゃんももぐもぐしながら聞いてくる。
私は少しの間もぐもぐし続け、ゴクンと飲み込むと口を開いた。
「……めちゃくちゃ美味しい…」
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ピピコ(プロフ) - 悠さん!『忘れねぇよ』に続きこちらでもコメントありがとうございます!この作品はギャグもシリアスもお楽しみ頂けるものにしているつもりなので、そう言って頂けると嬉しいです!長ったらしく続いておりますが、引き続きお楽しみ頂けたら幸いです! (2017年8月9日 18時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
悠 - とても面白かったです!特にギャグの部分が好きです。トリップの話は今回初めて読みましたが、感動しました!これからも、頑張ってください!応援しています!ピピコ様の書く小説大好きです! (2017年8月9日 16時) (レス) id: 7d25b2e8fd (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - オロナミンCさん» そんなに誉めて頂けるとは…!!感激です!ギャグとシリアス、どちらも楽しんで頂けているなら幸いです!!これからも笑いあり涙ありを目指して頑張らせて頂きますので、少しでも楽しんで貰えたら嬉しいです!ありがとうございました!! (2017年7月29日 18時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
オロナミンC - ギャグもシリアスもちょうどいいぐらいにあってとても読みやすく面白く感動します。楽しく読ませていただきました。 (2017年7月29日 17時) (レス) id: e86c711444 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - いちごみるくさん» 本当ですか!?そう言って頂けて嬉しい限りです!これから少しずつ物語が動いてくるので感動できるものを書けるように頑張ります!ありがとうございます!! (2017年5月3日 15時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年4月19日 11時