生きている主張 ページ38
『一ヶ月の甘味禁止令とか言われてよォ、冗談じゃねーよな』
『甘いもの禁止令なんて出されちゃうなんて、どれだけ食べたんですか』
…病室に訪れて、そのたびに俺はAと他愛のない話をしていた。誰も悲しまないような言葉だけをお互いに交換しなから、下らない話ばかりをしていた。それが俺とAの日課のようなもので、俺はそんな時間が好きだった。Aも、まるで病気なんて持っていない、そこらへんを歩いているような女と同じように自然に笑っていて、楽しそうにしていた。甘味処の席に並んで腰かけて、これが美味しいだとか、今度はあそこの店に行ってみたいだとか、そんな会話をしているみたいに。けれど、そんな話をして、Aは一体、どんなことを思っていただろう。
…Aには出来ないことを俺が出来て、それを証明しているような言葉を俺が不意に口にしたことで、彼女は何を思っただろう。
…勿論、そんなつもりはなかった。けれどそんなことは、Aからしてみればどうだっていいことで、ただの言い訳だった。
「…すごいと思いませんか」
と。そんなことをぐるぐると、何も言わずに考えていれば、Aはいつの間にか視線を上げていて、俺を真っ直ぐに見据えていた。さっきみたいな、意図して、安心させるように笑っているような雰囲気はもうなくなっていて、優しげに、小さな花を見つけたみたいに、小さく笑みを浮かべている。俺はそんな彼女を見据えて、続ける。
「心臓って、人の握り拳くらいの大きさしかないんです」
まるで、何かの神秘を語るように、宇宙の成り立ちを語るように。Aはそう言いながら、細い右腕を伸ばしては、俺の左胸に彼女の拳を当てた。俺の心臓は今も確かに音をたてていて、彼女の手が触れるとそれは少し大きくなったようだった。Aの心臓も、しっかりと音をたてている。それは、生きているという主張なのだ。
「これくらいです」
「小させェな」
「意外と小さいでしょ？」
きっと個人によって大きさは様々なのだろう。Aの手は俺よりも一回りほど小さいから、俺の心臓は多分もう少し大きいのだと思う。けれど、それにしたって思っていたよりも小さかった。そんなに小さなものが一度動くことによって、身体中に血液が回っていくのだと考えると、なんか、スゲェなと思った。そんなこと、考えたこともなかった。
「手のひらサイズのそれがないと、私達は生きていけないだなんて」
初めて知ったときはビックリして目を丸くしましたよ、と。彼女はそんなこともあったと言うように笑った。
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ピピコ(プロフ) - 香織さん» 香織さん！ありがとうございます！！アニメ化…！！そんなに言って頂けるなんてめちゃくちゃ嬉しいです…！！現在最終章滑走中ですので最後までお楽しみ頂けたらなと思います！！これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします！！ (2020年2月19日 15時) (
レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
香織(プロフ) - おもしろかったです！なんならアニメ化してほしいくらい感動しました！投稿頑張ってください！ (2020年2月19日 13時) (レス) id: feeb4f844f (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 麗華さん» お返事遅れてすみません…！！銀さんがたまにドギマギするのが個人的に好きなので(笑) 夢主ちゃんはそうですね、ふんわりとしたイメージの優しげなイメージです^^ (2018年3月27日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
麗華(プロフ) - こちらも面白いです！銀ちゃんの反応、たしかに面白いですよね！夢主ちゃんがとっても優しい！スゴいですよ！この世界にこんないい人いるかなって考えちゃいました！ (2018年3月24日 9時) (レス) id: b003dc750d (このIDを非表示/違反報告)
aina♪(プロフ) - こちらこそお願いします！(o^―^o)ﾆｺ (2018年3月21日 23時) (レス) id: 1890f311d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ピピコ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時：2018年2月16日 19時
