カーテン ページ11
「昔から身体が弱いんですよ」
…と、もう当たり前のことだと言うように、彼女は言った。彼女はここで、どんなことを思いながら、どんなことを考えながら生活しているのだろうか。ここで本を開きながら、紙飛行機を作りながら、彼女は何を思っていたのだろう。ベッドの上に戻り、そこに腰かけた彼女は、優しげに、けれど酷く寂しげに。それでも笑っていた。
入院というものを俺も何度かしたことはあるけれど、それは戦闘後だったり車にひかれたり、あるいは食中毒になったりした時くらいのものだ。ロクな理由ではない。それに、大人しく病室に籠ることもしなかった。
だから、長い間、この真っ白な病室で過ごす彼女の心情をまるで想像できなかった。壁も天井も、カーテンもベッドも清潔感のある白色に統一されていて、飾り気も何もない。例えばカーテンの色を変えられたなら。少しくらいはマシになるのかもしれない。
彼女は続ける。まるで、すぐそのに突っ立っている俺ではなく、嘗ての自分に語りかけているように。
「だからほとんど外で遊んだこともなくて、病室で大人しくして今まで育ってきたから」
たまに、どうしようもなく遠くに行きたくなるんです、と。窓の外を眺めながら、彼女は口にする。そこに広がるすべてに、羨望の目差しを向けているみたいに。青い空に、数羽の鳥が飛んでいるのが見えた。
「…あの鳥みたいに、風に乗って飛んでいく紙飛行機みたいに。ここから飛び出して何処かに行けてしまえたらって」
…鳥にさえ、紙飛行機にさえ、彼女には羨ましく思えてしまうのかもしれない。それほどまでに切実な願いなのに、その願いを彼女は、叶えられないと知っている。ベッドに寝ながら、それをすべて、諦めてきたのだろう。何もかもに憧れを持ちながら、それを捨てざるを得なかった。叶えられないと知っているのに抱いてしまう望みはきっと、何よりも強いもので、それと比例するように、悲しいものなのだと思う。
そんなことを思っていれば、彼女は伏せていた目をこちらに向けて、ごめんなさいと一言謝った。
「なんだか、変な話をしてしまって」
「いや」
「なんせお友達もいないから、ついつい話しすぎてしまいますね」
ふふ、と。彼女は笑う。右手を口元に持っていきながら。なんだか楽しそうに。偽って楽しそうにしているようには見えなくて、多分本当に心からそう思ってくれているのだろうと、俺は思う。
「こんなに誰かとお話したのは、久しぶりです」
「…なら、良かったよ」
俺は呟いた。本当に、心からそう思えた。
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ピピコ(プロフ) - 香織さん» 香織さん！ありがとうございます！！アニメ化…！！そんなに言って頂けるなんてめちゃくちゃ嬉しいです…！！現在最終章滑走中ですので最後までお楽しみ頂けたらなと思います！！これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします！！ (2020年2月19日 15時) (
レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
香織(プロフ) - おもしろかったです！なんならアニメ化してほしいくらい感動しました！投稿頑張ってください！ (2020年2月19日 13時) (レス) id: feeb4f844f (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 麗華さん» お返事遅れてすみません…！！銀さんがたまにドギマギするのが個人的に好きなので(笑) 夢主ちゃんはそうですね、ふんわりとしたイメージの優しげなイメージです^^ (2018年3月27日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
麗華(プロフ) - こちらも面白いです！銀ちゃんの反応、たしかに面白いですよね！夢主ちゃんがとっても優しい！スゴいですよ！この世界にこんないい人いるかなって考えちゃいました！ (2018年3月24日 9時) (レス) id: b003dc750d (このIDを非表示/違反報告)
aina♪(プロフ) - こちらこそお願いします！(o^―^o)ﾆｺ (2018年3月21日 23時) (レス) id: 1890f311d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ピピコ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時：2018年2月16日 19時
