【銀魂】君と共に生きる春 3【坂田銀時】

意味があるとは思えない ページ10

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Aの病室に訪れてから翌日。今日も相変わらず騒がしい江戸の街をぶらりぶらりと歩いていた。特に行く宛はない。やはり今日も万事屋に仕事の依頼なんてものはなく、事務所に居たってやることもないのでなんとなく外に出てみたのだ。テレビもロクな番組やっていないし、まぁつまるところ暇を極めたのだ。仕事がないということで、神楽は友達と遊んでくると言って出掛けていったし、暇だからとソファーに寝転がってダラダラとしていたら掃除をしていた新八に邪魔だと、もっとシャキッとしろと言われてしまったのだ。やることがないのだから、ダラダラとしていることくらいしか出来ないだろうに。用もないのにシャキッとしたって何か意味があるとは俺には思えない。

が、とはいえ新八におかんのようにガミガミと小言を言われ続けてしまうのもそれはそれで喧しいし面倒なので、散歩にでもと繰り出したわけなのだ。掃除も俺が居ない方がやりやすいだろうし。掃除機の音がウィーンと鳴っていれば手持無沙汰のように見ていたテレビの音も聞こえないし。

そんなわけで、歌舞伎町を抜けて、あまり歩かない方向へと足を進めていく。適当に抜け道を見つけては、何も考えずにそこに足を踏み入れてみたりして。石の塀の上で、一匹の猫がひなたぼっこをしていて、俺が横をすり抜けると同時にくぁぁと無遠慮なあくびを漏らし、それから大きな目をパッチリと閉じてしまった。酷く眠たそうだ。

昨日に比べて今日は天気がいい。ひなたぼっこ日和という奴なのかもしれない。同時に、散歩日和でもある。空を仰ぐと透き通る青色が広がっていて清々しかった。鳥が頭上を飛んでいくのが見えた。


抜け道を抜けると、商店街に出てきた。買い物はほぼ新八に任せているから、あまり利用しない通りだ。服屋、花屋や八百屋、魚屋なんかが並んでおり、そこを行き交っているのはほとんど主婦ばかりで、自分が歩いているとなんだか場違いなような気もしてきてしまうが、俺としては関係のないことだ。

ふと、とある思いが頭を過る。Aは、こんな日常風景でさえも、目にすることが出来ないのだと。服屋で自分が好みな着物を選ぶことも、八百屋で今晩の飯の材料を調達することも、出来ないのだと。


…Aに出会ってから、そういうことを、よく考える。

俺の目の前に広がっているものすべてが。体験していることのすべてが、Aにとってはまるで非現実で、その中にはきっと見たことのないもの、知らないこともあるのだろう。

そう思うと、何処かやるせなさを覚えてしまう。

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