そんな感じ ページ8
小説だとかそういうものなんて、最後に読んだのはいつのことだろうか。そんなことを考えながら、新八と最近のイチオシの本について楽しそうに語っているAの横顔をなんとなく眺めてみる。話になんとか入っていけないものかとも思うけれど、やはり本なんざロクに読みもしない俺にその話題は少し難しいものがあったので躊躇われたのだった。この状況を蚊帳の外のように感じてしまいそうなものだけれど、彼女の笑った顔を見ているのは、正直悪い気はしない。ただ、何故だかは分からないけれどなんだか不服だと俺の中にあるものが訴えているのは、ぼんやりと自覚はしていた。まぁ、そんなことをまた何なんだと悶々と考えるのは無駄なのだろうと理解したので、それは取り敢えず頭の片隅にでも適当に置いておくことにする。
俺が小説の類いを読んだのは…いつだっただろう。多分万事屋を始めてからそんなことをした記憶がないように思える。なら、それよりも更に前のことになるのだろう。昔からそういうものに興味はなかったので、恐らくは自らの意思で読んだのではないのだろう。そう考えて、あぁきっと、と俺は思う。ガキの頃、寺子屋の授業で読まされた時だろうと俺は納得する。そのときに習った物語なんてものは、もう覚えてはいないけれど。
となると、下手したらもう20年はそういうものを手に取っていないということになる。ジャンプは読者歴20年はあるというのに。
「銀さんは、何か読まれるんです?」
「え」
と、そんなことを考えていれば不意に話題がこちらに向いて、同時にAがおれを見据えた。俺は思考を一旦ピタリと止める。微かに首を傾けているAの言葉が遅れて脳に達されるように、時間差で頭が処理していく。
「俺はあんま読まねェなこういうの。真面目に読んだ記憶がねェ」
「あはは、うん、なんかそんな感じします」
「そんな感じってなんだろうAさん」
クスクスと笑って見せるAは「だって」と続ける。
「銀さんが本読んでるとことか、あんまり想像できないですもん」
そう見える?と問い掛けると、見えます、と自信満々に頷くA。その言葉の真意は知性がないように見えるとか、そういうことなのだろうか、なんてことをふと考えて、いや、Aに限ってそんなことあるはずがないとその可能性を容赦なくゴミ箱にぶちこんだ。この暖かな日向のような優しげな笑みの裏でそんなブリザードのように冷たいことを思っているわけがない。
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ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ここまで中々お話が進まなくてすみません!焦っている中そんな風に言って頂けてとても嬉しいです!これからキュンキュンを大量投下できるように頑張ります!!今後ともお楽しみ頂けたら幸いです!! (2018年11月24日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
桜 - すごい面白いです。てか、キュンキュンします。最高です。更新頑張ってください! (2018年11月24日 21時) (レス) id: fcb91909ae (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃんいつもありがとう!沖田隊長、シリーズでもコメントありがとう!いつも励まされてます!ちょっとでも誰かの心に響くものがあればいいなぁと思いながら書いてるから、そうなら嬉しいな!しーちゃんも色々忙しいと思うけど、しーちゃんのペースで頑張ってね! (2018年10月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - 君春続編おめんとさんです! ピー姉の小説は一文一文が丁寧で本当に尊敬しとります! ピー姉のペースで更新頑張ってね! (2018年10月2日 20時) (レス) id: 09ad90d8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 続編に参りました!!少しずつになるとは思いますが精一杯お話を進めていくつもりですので、お楽しみ頂けたらなと思います!!頑張らせて頂きますのでよろしくお願いします!! (2018年10月1日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年10月1日 19時