【銀魂】君と共に生きる春 3【坂田銀時】

文庫本 ページ7

「…うわ、ホントに字ばっかアル…しかも…ぎっしり…」

「神楽ちゃんはこういう本とか読まないの？」


Aから受け取った文庫本を開いてみては、ペラペラと適当に神楽はページをめくっていて、そこに記されている文字の群れを見てはぱちくりと目を瞬きながらAの言葉に頷いた。神楽はたまに漫画を読んでいることがあるが、こういう小説を読んでいるところを見たことがないし、大人しく大量の文字を目で追っていくソイツの姿を俺は想像できなかった。俺もその紙面を見てみたけれど、それは本当に挿絵なんてものはなくて、ひたすらに文字がズラリと並んでいた。目がチカチカしてしまいそうになるほどである。

購入してからそれなりの時間が経過しているのだろうか、その紙面はほんの少しだけ黄ばんでいるように見える。けれど、そんなのは全然気になることではなく、それがまた、物の味というのだろうか、優しげな何かがその色によって加わっているようにも見えた。その本の表紙のように、暖かな印象を与えてくる。

文庫本の表紙には、淡い桃色とそこに光るように白色が散りばめられた桜並木が描かれており、その絵の中で、二人の男女が手を繋いで歩いている後ろ姿があった。なんだか、ただの絵だというのに、気のせいだと分かっているのに、俺には眩しく思えてしまう。


「へぇ…初めて見る作家さんの名前です」

「新八くんは読む人？」

「まぁ、ちょっとだけ。映画化した奴とか、話題でテレビとかで詳解された奴とか、気になったのがあったらたまに読みます」

「あー、私もテレビで紹介されてたりすると読みたくなっちゃうなぁ」


神楽はAから手渡された文庫本をまだ眺めたままで、新八とAは本を読む者同士で何やら盛り上がりを見せていた。Aが最近気になっている話題作のタイトルを口にすると、新八は「僕もそれ気になってます、感動作ってすごい売れてるらしいですね」と楽しげだ。

俺はというとあまり、というより、まったくと言っていいほどそういった小説の類いを手に取らない。本屋に立ち寄ったとしてもそれはジャンプを手にいれるためであって、それを買ったらもう本屋に用はなく、他のコーナーに寄ることもない。興味もなかったので話題作なんかもテレビでやっているのを見ても覚えていなかった。そのため、その話題に俺はまたしても入っていけずにいた。

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