【銀魂】君と共に生きる春 3【坂田銀時】

俺はというと ページ45

銀時side


Aから退院できるかもしれないという報告を受けてから、数日後。Aは退院できた時に、何処に行きたいと望むのだろう。連れていきたいところに連れていくことを約束した俺は、あの日の帰り道からずっとそのことばかりを考えていた。きっとAは、見たことのない場所や行ったことのない場所がたくさんあるのだろう。幼いときから入退院を繰り返していて、あまり無理な運動も控えなければならなくて。そんな状態では遠出も難しかったかもしれない。まぁAの体力や体調を見ながらになるとは思うけれど、彼女が望む場所に出来るだけ連れていってやりたいと俺は思う。原チャリとかに乗ればちょっとの距離くらいはなんとでもなるだろうし。

そんなことを考えながら過ごしていたのだけれど、あれから数日が経った今、俺はというと。


「ヒェッックシュンン！！」


風邪をひいていた。盛大なくしゃみが寝室に響き渡り、それによって鼻水が出てきてしまった。頭上に置いてあるティッシュを一枚抜きとり、鼻をかむ。先程からそうしてばかりいるため、鼻の下がそろそろヒリヒリとしてきた。


「あ゛ー…新八ィ、鼻の下が痛てェよォ……鼻セ○ブ買ってきてェ…」

「カシミヤのティッシュなんて買うお金がうちにあると思いますか」

「新八の奢りで」

「嫌ですよろくに給料も貰ってないのに」


寝室に掃除機をかけている新八はそう冷たく言い放つ。なんてことだ、病人が寝ている部屋に容赦なく掃除機をかけるという暴挙に出ている上に苦しむ俺に向かってそんな冷徹に言葉を放つなんて。ただでさえ風邪で凍える身体が更に冷たくなっていく感覚を覚えた。俺の周りだけ吹雪がゴォォォッってなってるんじゃないだろうか、誰か確認してくれないだろうか。それか冷えきった俺の心を、かじかんだ俺の心を包むような優しさで暖めてくれやしないだろうか。


「まったく、だらしない生活してるから風邪なんかひくネ、馬鹿のくせに」


と、布団に身をくるみつつも寒気が止まらずカタカタと震える俺に暴言を吐いてくるのは神楽である。「いや、それ神楽ちゃんが言う？」と新八は一度掃除機を止めて苦笑しているけれど、神楽はそんなもの無視して俺をリビングと寝室とを隔てるための襖からこちらを覗くように顔を見せながらに「私まで風邪が移ったらどうしてくれるアルか」と。


「いやお前それこそ大丈夫だろ、何しろこの場に居るなかで誰が一番の馬鹿かってそれはお前…」


それを言い切るよりも前に、俺の顔のすぐ横に銃弾が飛んできた。

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