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知ることができるのが ページ42




…いつの間にか、空の色が変わり始めようとしていた。まだ日が落ちるタイミングが早く、あぁだこうだと話していたらすぐに暗くなってしまう。病室の照明がぼぅ、と自動でついたことによりそれに気付いて、「そろそろ帰っかな」と俺は呟いた。現在時刻は午後五時を過ぎたくらい。窓の外に見える江戸の街は濃い茜色に包まれており、空の高いところには紺色が出始めている。もうじきAの夕飯も届けられるだろうし、ここらでお暇した方がいいだろう。

Aは「神楽ちゃんと新八くんが心配しますしね」と微笑んだ。あのガキ共二人に限ってそんなことはないだろうけれど。というか俺が日を跨いでも帰ってこない、なんてこともあったくらいだけれど。それでもアイツらは特に心配なんてしていなかったけれど、そんなことは彼女に言う必要はないだろう。「そうだな」と頷いて、椅子から立ち上がる。

と、Aの口から神楽と新八の名前が出てきて、俺はそういえば今日は久しぶりに俺だけがここに来たのだったということを思い出した。


「なんか悪かったな」

「え?何がですか?」

「いやさ、二人も来た方がお前も楽しかったかなってさ」


神楽と新八を連れていくと会話が弾むし、Aも楽しそうに笑っている。特に神楽とはまるで姉妹のようだし、二人が居た方が彼女も嬉しいのではないかと思ったのだ。今日は俺だけで行くように前回ここに来たときから決まっていたけれど、やはり俺一人よりもアイツらを連れてきた方が良かったかもしれない、そう思ってそんなことを口にした。

けれど、Aは首を横に振って、「そんなことはないですよ」と小さく笑う。


「そりゃ、神楽ちゃんと新八くんが来てくれるときも嬉しいですし楽しいですけど、銀さんが来てくれるのも、嬉しいし楽しいです」


それが繕ったような嘘なんかではないことは、彼女の表情を見れば分かった。「それに」と、Aは続ける。


「あの二人が一緒に来てくれる時って、銀さん、とても自然なんですよ」

「…自然?」

「はい。私だけの時にはあまり見たことがない顔を見せてくれるし、そういうところを見ているのが楽しかったりもするんです」


二人からも私が知らない銀さんを教えてもらえるし、と。クスクス笑いながらそう言った。

そして、彼女が二人と会話を交わしながらも、俺のことも見ていてくれていたのだということに気付いて。


「銀さんのことを知ることができるのが、とても嬉しいんです」


…そんな言葉にも、どうにも、甘やかな感情を覚えてしまう。

知らない痛み→←希望になれるなら



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設定タグ:銀魂 , 坂田銀時   
作品ジャンル:アニメ
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ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ここまで中々お話が進まなくてすみません!焦っている中そんな風に言って頂けてとても嬉しいです!これからキュンキュンを大量投下できるように頑張ります!!今後ともお楽しみ頂けたら幸いです!! (2018年11月24日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
- すごい面白いです。てか、キュンキュンします。最高です。更新頑張ってください! (2018年11月24日 21時) (レス) id: fcb91909ae (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃんいつもありがとう!沖田隊長、シリーズでもコメントありがとう!いつも励まされてます!ちょっとでも誰かの心に響くものがあればいいなぁと思いながら書いてるから、そうなら嬉しいな!しーちゃんも色々忙しいと思うけど、しーちゃんのペースで頑張ってね! (2018年10月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - 君春続編おめんとさんです! ピー姉の小説は一文一文が丁寧で本当に尊敬しとります! ピー姉のペースで更新頑張ってね! (2018年10月2日 20時) (レス) id: 09ad90d8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 続編に参りました!!少しずつになるとは思いますが精一杯お話を進めていくつもりですので、お楽しみ頂けたらなと思います!!頑張らせて頂きますのでよろしくお願いします!! (2018年10月1日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年10月1日 19時

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