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水も滴る ページ5




「A姉、入るヨー」

「はーい」


…病院であることを配慮してか、神楽は万事屋でお見舞いお見舞いと騒ぎ立てていた時よりも大分声を抑えながらに薄い緑色をした扉を隔てた病室に向かってそう声をかけた。中からは穏やかで、高すぎず低すぎない落ち着いた声が聞こえてくる。神楽の声が聞こえたからか、彼女の声のトーンも少し明るいような気がした。「春樹A様」と記されたプレートがある病室の扉に向かって左側にある窓からは、薄曇りの空が窺えた。今日は曇りのようであった。雨が降るとは天気予報では言っていなかったから恐らくは大丈夫だろうと踏んで傘は持ってきていない。荷物は出来るだけない方がいいだろう。因みに神楽はいつもの紫色の番傘を片手に持っている。万が一雨が降ってきたりでもしたら、その傘に無理矢理三人で入ることにしよう。入らなかったら、眼鏡掛け機には濡れてもらうことにする。

大丈夫、水も滴るいい眼鏡なのだから。そんなことを考えていればガラガラと神楽が扉を開けて病室に入っていく。Aとも打ち解け、何度もここに来ているからもう緊張することも躊躇うこともなかった。

るんるんと言った様子の神楽は右手を軽く上げては「来たヨA姉!」とベッド脇に駆け寄る。


「こんにちは神楽ちゃん、また遊びに来てくれたんだ、嬉しい」

「私も会いたかったヨ〜」


神楽に続いて居れと新八も病室に足を踏み入れ、ベッドに腰掛けている彼女を見つける。神楽と完全に打ち解けたように笑い合っていて、やはり姉妹のように見える。Aが俺達にも気付いて、こちらにも柔らかな笑みを向けた。

春が待ち遠しくなるような、優しい笑み。


「銀さん、新八くんもこんにちは」

「こんにちは」

「……よ」


俺達が返すと、Aは浮かべた笑みを更に深めて。窓から微かに差し込んでくる光は曇り空のせいでいつもより暗いはずなのに、それでもこの空間が柔らかな光に包み込まれるようであった。その笑みを目にしては、また何とも言えない感覚が俺を揺さぶってくる。凪いでいた海に小さな風が吹いたように、僅かに波打つように。

それでもそれが何なのかはやはり分からず、俺は何ともないような顔をして「元気か?」と軽く問い掛ける。Aは「元気ですよ」と右手の親指を立てて見せた。


「銀さんはお元気ですか?」

「俺?俺は…まぁ、元気、なんじゃね?」

「疑問系じゃ困りますよ、元気で居てくれないと」


クスクスとおかしそうに肩を震わせながら笑う彼女に、俺も少しだけ笑った。

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設定タグ:銀魂 , 坂田銀時   
作品ジャンル:アニメ
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ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ここまで中々お話が進まなくてすみません!焦っている中そんな風に言って頂けてとても嬉しいです!これからキュンキュンを大量投下できるように頑張ります!!今後ともお楽しみ頂けたら幸いです!! (2018年11月24日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
- すごい面白いです。てか、キュンキュンします。最高です。更新頑張ってください! (2018年11月24日 21時) (レス) id: fcb91909ae (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃんいつもありがとう!沖田隊長、シリーズでもコメントありがとう!いつも励まされてます!ちょっとでも誰かの心に響くものがあればいいなぁと思いながら書いてるから、そうなら嬉しいな!しーちゃんも色々忙しいと思うけど、しーちゃんのペースで頑張ってね! (2018年10月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - 君春続編おめんとさんです! ピー姉の小説は一文一文が丁寧で本当に尊敬しとります! ピー姉のペースで更新頑張ってね! (2018年10月2日 20時) (レス) id: 09ad90d8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 続編に参りました!!少しずつになるとは思いますが精一杯お話を進めていくつもりですので、お楽しみ頂けたらなと思います!!頑張らせて頂きますのでよろしくお願いします!! (2018年10月1日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年10月1日 19時

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