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好きなもの ページ38

「えへへへ、なんか、嬉しいですね」


と、本当に嬉しそうな表情で顔を綻ばせて頬を微かに桃色に染めているA。彼女は嬉しいときや楽しいとき、ダイレクトにそれを表情や言葉で現してくれるからこっちまでそれが移ってくるようで。その笑顔に釣られて、俺も無意識のうちに笑みを浮かべてしまっていた。そんな自分に気付いては、やはり俺はいつだってこの笑顔を見たいと望んでいるのだということを実感し、そして確信した。彼女が笑っていると、まだ寒さが健在のこの季節でさえ、暖かな光で包まれる気がする。見えている世界がワントーン明るくなるような気がする。それは錯覚なのだろうけれど、だが気のせいではないことは分かる。他の誰かがどうなのかは知らないけれど、俺はそう思うのだ。

それにしても、まるで自分が書いた物語を褒めちぎられているみたいに嬉しそうにするものだから、俺は「そんなにかよ」と思わず笑ってしまいながらそう呟いた。Aはそんな俺の言葉を聞いて、「だって、」と口を開く。その声にはまだ有り余っているような弾けた感情が含まれているように聞こえた。いつも思うが、本当に毬みたいだ。


「自分が好きなものを好きになってくれようとするって、すごく嬉しいことですよ」

「そういうもん?」

「そういうものです」


自信ありげにAは大きく頷いて、そうして「そうだ!」と何かを思い出したように目を少しだけ見開いた。


「私も読んだんですよ!」

「読んだって、何を?」


首をかしげて聞き返す俺を他所に、Aはベッドから立ちあがり、ベッドの横にある棚の前に立った。そこにはAの私物。例えば本などがしまわれているのだが、そこを開けてはご満悦で何かを取り出し、「じゃーん」とこちらに見せ付けるように突き出した。それは、俺も見覚えのあるもので。


「あッ!ジャンプ…!!」

「銀さんに言われて、売店で買ってきちゃいました」

「マジでか」


この間来たときに、小説の話のついでにジャンプの話もしていたことを思い出す。漫画はあまり読まないというAにその時掲載されている漫画のことを問い掛けられオススメを教えたのだ。彼女は真剣に俺の話を聞いてくれていたのだが、まさか本当に手に取るとは思っていなかった。

俺達は知らないところで、お互いに同じことをしていたのだ。そう思うと、何とも言えないが、くすぐったい感覚を覚えた。けれど照れ臭いから、そんな素振りは見せないようにして、「どうだったよ?」と俺はAに問い掛けた。

誇らしい→←ネタバレは勘弁



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設定タグ:銀魂 , 坂田銀時   
作品ジャンル:アニメ
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ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ここまで中々お話が進まなくてすみません!焦っている中そんな風に言って頂けてとても嬉しいです!これからキュンキュンを大量投下できるように頑張ります!!今後ともお楽しみ頂けたら幸いです!! (2018年11月24日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
- すごい面白いです。てか、キュンキュンします。最高です。更新頑張ってください! (2018年11月24日 21時) (レス) id: fcb91909ae (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃんいつもありがとう!沖田隊長、シリーズでもコメントありがとう!いつも励まされてます!ちょっとでも誰かの心に響くものがあればいいなぁと思いながら書いてるから、そうなら嬉しいな!しーちゃんも色々忙しいと思うけど、しーちゃんのペースで頑張ってね! (2018年10月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - 君春続編おめんとさんです! ピー姉の小説は一文一文が丁寧で本当に尊敬しとります! ピー姉のペースで更新頑張ってね! (2018年10月2日 20時) (レス) id: 09ad90d8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 続編に参りました!!少しずつになるとは思いますが精一杯お話を進めていくつもりですので、お楽しみ頂けたらなと思います!!頑張らせて頂きますのでよろしくお願いします!! (2018年10月1日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年10月1日 19時

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