持たざるものには ページ36
つまるところ自分が銀さんに何を伝えたいのか、私自身にもよく分かっていなかった。だから上手いこと言えないのも無理はないことで。なら余計な口を開かなければ良かったのだけれど、それでも何かを言いたかったのだ。そうなんですねと、それだけでこの話を終らせることが出来なかったのだ。私は言葉の終盤には声を徐々に小さくしていきながら、必死に手繰り寄せた言葉をなんとか発した。変なことを言っている自覚はあったので、彼がどう受け取ったのか不安で、銀さんの顔を見据えることができないままであった。
けれど、口にしたその言葉は私が本当に思っていることでもあった。彼と出会った人は。きっと彼と街ですれ違った人は、彼のことを忘れないと思う。彼の持つ銀色の髪は、何処ででも目を惹くものだろうと。私がもしこうして彼と出会って会話をすることがなかったとして。街中で彼とすれ違うだけだったとして。それでも、名前を知ることがなくとも、彼を覚えていられる自信があった。
私は病気であるということを除いて、特にこれといった特徴と言うか、誰かに覚えられるような何かを持ってはいないから、関わりを持たなければ覚えられることはないだろうと思う。
「……そういう風に考えたことなかったな」
私が視線を伏せて頭を巡らせていれば、銀さんはポツリとそう呟いた。その言葉に顔を恐る恐る上げてみると、彼は成る程なぁと言う風に自身の髪を少し摘まんでいた。
「そう言われると、案外悪いもんでもないような気がしてくる」
「…そうですよ」
私は頷く。彼がそう言ってくれて、なんでか私が安堵して、ふと思った。私は彼に、彼の持っているものを否定してほしくなかったのだ。彼が自身の容姿に否定的なものを持っているのが寂しかったのは、その理由からなのだろう。私には関係のないことだし、そう言われてしまったら何も言い返せないけれど、そう思ったから言葉が感情のまま、考えることをすっ飛ばして出てきてしまったのだ。
私はさっきも言った通り、彼のその銀色の髪が好きだ。綺麗で浮世離れしていて、眩しいその色は、いつからか私の中にずっとあって。その色を見ていると、とても落ち着くのだ。
「私だって羨ましいですよ、そういう自分だけの特別なものがあって、誰かの目印になれそうなものがあって」
「そうかァ?俺はお前のが羨ましいけどな」
「持たざるものには、分からないものなんですよ」
イタズラっぽい笑みを浮かべて見せれば、彼は「そうかもな」と笑ってくれた。
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ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ここまで中々お話が進まなくてすみません!焦っている中そんな風に言って頂けてとても嬉しいです!これからキュンキュンを大量投下できるように頑張ります!!今後ともお楽しみ頂けたら幸いです!! (2018年11月24日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
桜 - すごい面白いです。てか、キュンキュンします。最高です。更新頑張ってください! (2018年11月24日 21時) (レス) id: fcb91909ae (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃんいつもありがとう!沖田隊長、シリーズでもコメントありがとう!いつも励まされてます!ちょっとでも誰かの心に響くものがあればいいなぁと思いながら書いてるから、そうなら嬉しいな!しーちゃんも色々忙しいと思うけど、しーちゃんのペースで頑張ってね! (2018年10月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - 君春続編おめんとさんです! ピー姉の小説は一文一文が丁寧で本当に尊敬しとります! ピー姉のペースで更新頑張ってね! (2018年10月2日 20時) (レス) id: 09ad90d8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 続編に参りました!!少しずつになるとは思いますが精一杯お話を進めていくつもりですので、お楽しみ頂けたらなと思います!!頑張らせて頂きますのでよろしくお願いします!! (2018年10月1日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年10月1日 19時