好きとは言えない ページ34
悪目立ち、と彼の口にした言葉を頭の中で反芻しながら、私は彼の髪にまた視線を向ける。まだ冷たい色を帯びた日差しに照らされているふわふわとしたそれは、確かに街中を歩いていると目立ってしまうくらいの色をしていると思う。実際、彼に会うまで銀色の髪をした人なんて一度も見たことがない。私はあまり、と言うよりかなり外の世界を知らないけれど、それでもそういう人は多いのではないだろうか。初めて会ったときも銀色の髪に目が無意識にいったし、茉莉花ちゃんも珍しいと興味津々といった感じで彼の髪を触っていたし、鶴見さんもこっそりと『坂田さんの髪の毛ってすごいよね、染めてるっぽくないよね』と言っていた。鶴見さんは病院の外の世界も沢山見てきて知っているだろうから、やはり珍しい髪色なのだろう。
私も最初は染めてるのかなと思っていたけれど、彼と話していると分かってくることがあって。そのひとつが、彼はとてつもなく面倒くさがりということだ。神楽ちゃんや新八くんがよく話してくれる銀さんの話でもそういった一面が赤裸々に語られている。それを踏まえると、彼がわざわざ髪を自分で染めたりはたまた染めにお店に行ったりするということは考えにくい。恐らく地毛なのだと思う。
「生まれつき、なんですよね?」
ある日突然髪色がこんな風に変色することなんて有り得ないだろうから。彼はあァ、と相槌をうつ。
「だから正直羨ましいよ、サラサラストレートの綺麗な黒髪でさ。お前の髪」
ベットテーブルに肘をついて、頬杖をしながら彼はそんなことを呟く。自分の持っているものに対して羨ましいなんて言われたことなんてなかったし、然り気無くなんだか嬉しいような気のすることを言われて、一瞬言葉を詰まらせてしまった。
彼に褒められている。それがとんでもなく嬉しかった。なんだか頬が熱くなる感覚がした。
…また、知らない感情が揺さぶられている。
「…あまり、好きじゃないんですか?自分の髪」
思わず視線を下に向けて、布団を握っていた手のひらを見据えながらにそんなことを問い掛けた。彼は先程から、自身の髪について否定的なように思えたのだ。「んー」と声を漏らしてから、続ける。
「ま、好きとは言えねーかもな。浮くし、天パダセーし」
銀髪なんて普通じゃねーだろ、と。彼は言う。そんなことを思っていたのか、と内心で思った。彼の視線は、つまらなそうに自身の銀色をした前髪を眺めていた。
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ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ここまで中々お話が進まなくてすみません!焦っている中そんな風に言って頂けてとても嬉しいです!これからキュンキュンを大量投下できるように頑張ります!!今後ともお楽しみ頂けたら幸いです!! (2018年11月24日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
桜 - すごい面白いです。てか、キュンキュンします。最高です。更新頑張ってください! (2018年11月24日 21時) (レス) id: fcb91909ae (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃんいつもありがとう!沖田隊長、シリーズでもコメントありがとう!いつも励まされてます!ちょっとでも誰かの心に響くものがあればいいなぁと思いながら書いてるから、そうなら嬉しいな!しーちゃんも色々忙しいと思うけど、しーちゃんのペースで頑張ってね! (2018年10月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - 君春続編おめんとさんです! ピー姉の小説は一文一文が丁寧で本当に尊敬しとります! ピー姉のペースで更新頑張ってね! (2018年10月2日 20時) (レス) id: 09ad90d8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 続編に参りました!!少しずつになるとは思いますが精一杯お話を進めていくつもりですので、お楽しみ頂けたらなと思います!!頑張らせて頂きますのでよろしくお願いします!! (2018年10月1日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年10月1日 19時