突っ掛かっていた ページ30
「え、何が?」
「…茉莉花ちゃんの、勘違いのこと」
嫌な気分にさせちゃったかなって、と、Aはそう小さな声で口にしては、トボトボと進めていた足を止めてしまった。それに気付いて俺も立ち止まり、数歩後ろに立っているAの様子を窺うべく振り返ると、顔を軽く俯かせていて、Aから見て斜め右側に視線を逃がしている。その目には不安の色が浮かんでいて、さっきまで仄かに浮かべていた微笑みも、今は消えてしまっている。何か続ける言葉を探しているみたいにほんの少し視線を動かしたけれど、何も言わないままに口を真一文字に引き結んでしまっている。そんな表情を見て、小児科の病室からエレベーターを出るまで彼女が考え事をしているような横顔をしていたのは、このことを気に病んでいたからなのかと理解した。
そんなことを気にする必要はないのに、そんなことで暗い顔を浮かべることはないのに、ただの子供の勘違いなんかで顔を俯かせてしまうAは、繊細で誠実で、人よりもそういうことに敏感で、悪く言えば神経質なのかもしれない。それは彼女が優しいからでもあり、そして、同時に人付き合いに慣れていないからでもあるのかもしれない。
必要のない不安は、取り除いてしまうべきだ。俺はそっと口を開く。廊下は静かなので、無意識に声も潜められたものだった。
「んなことねェよ、やな気分になんざなってねェから」
「…けど、なんだか、その……迷惑っていうか、失礼だったなって…」
控え目に口を開いて、そんなことを言う。迷惑とも失礼とも思っていないし、どうして俺がそんな風に思っていると考えてしまうのだろう、そんな酷い顔でもしてたのだろうか。
本当に、茉莉花からそんなことを言われたときは、ちょっと驚いただけで、否定的なことは何一つとして思わなかった。だが、約二十年もアイツより長く生きているのに名前を呼び捨てされるのは、不服だったけれど。それだけだった。
どうしたら彼女の不安を、罪悪感を払拭できるのか。俺は言葉を探す。けれど、気の利いた台詞なんて俺の頭じゃ出てきやしなくて。
代わりに、何処かに突っ掛かっていた疑問が飛び出してくる。
「つかさ、」
あまりちゃんと考えもしないうちに、俺は口を開く。
「俺とそういう風に思われんの、嫌だった?」
「……へ、」
腰を軽く屈めてはAの顔を覗き込むように見据えた。Aは俺の言葉に顔を上げて、キョトンとした顔をしていた。
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ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ここまで中々お話が進まなくてすみません!焦っている中そんな風に言って頂けてとても嬉しいです!これからキュンキュンを大量投下できるように頑張ります!!今後ともお楽しみ頂けたら幸いです!! (2018年11月24日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
桜 - すごい面白いです。てか、キュンキュンします。最高です。更新頑張ってください! (2018年11月24日 21時) (レス) id: fcb91909ae (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃんいつもありがとう!沖田隊長、シリーズでもコメントありがとう!いつも励まされてます!ちょっとでも誰かの心に響くものがあればいいなぁと思いながら書いてるから、そうなら嬉しいな!しーちゃんも色々忙しいと思うけど、しーちゃんのペースで頑張ってね! (2018年10月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - 君春続編おめんとさんです! ピー姉の小説は一文一文が丁寧で本当に尊敬しとります! ピー姉のペースで更新頑張ってね! (2018年10月2日 20時) (レス) id: 09ad90d8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 続編に参りました!!少しずつになるとは思いますが精一杯お話を進めていくつもりですので、お楽しみ頂けたらなと思います!!頑張らせて頂きますのでよろしくお願いします!! (2018年10月1日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年10月1日 19時