彼女の中にあるのなら ページ23
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「最近はとても安定しているから、病室から出ても大丈夫になったんですよ」
運動不足になっちゃっうからって、毎日のようにお散歩に出ていて、と、鶴見は嬉しそうに俺の数歩先を歩きながらにそう語る。Aの病室で彼女が小児科に遊びに行っていると聞いてから、鶴見はわざわざ小児科に案内してくれていた。鶴見にも看護師としての仕事があるだろうし、病室で待っていればそのうちAも帰ってくるだろうし、というかAは今自分の時間を楽しく過ごせているのだから、俺は帰っても良かったのだけれど、それを鶴見に口にするも彼女は「小児科病棟の近くに用事もあるし」「Aちゃんも坂田さんが来てくれたら嬉しいだろうし」「折角会いに来てくれたのに勿体ないでしょう?」とごり押しされたため、大人しくついていっていた。
やはりここ最近のAの病状は落ち着いていたらしく、病室に一日中閉じこもっていなくても大丈夫になったようだった。病院内とはいえ出歩けるようになったことはAもきっと嬉しいのだろう、それを思うと、自然の俺の中にも嬉しさが込み上げてくる。
鶴見は「Aちゃん自身もとても穏やかだし、これも坂田さん達のおかげかしら」とこちらを肩越しに振り向けながらにそう口にした。
「んな大袈裟なことしてねーっスよ」
「大袈裟なことではなくても、あの子にとっては大きなことだってあるんですよ。価値観は人それぞれ」
この間も言ったけど、Aちゃんは坂田さんが来てくれるようになってから随分と元気になったんですから、と。彼女は続ける。
「Aちゃんにとって、貴方達は、貴方はとても大きな存在なのね」
「……」
…俺はAの友人であり、彼女が病室で暇をもて余すことのないように暇潰しの相手として病室に来ている感覚があった。俺と話すことで彼女が楽しい時間を過ごせるならそれでいいと思っているし、少しでも笑ってくれたらと思う。
けれど、俺が居なくても楽しい時間を過ごせるのならそれに越したことはないのではないか。歩いて行ける距離に話し相手が居るのだから。少なくとも今は、病室で一人きりで過ごさなくてはならないわけではないのだから。
けれど、もし、Aにとって俺達が、俺自身が大きな存在として彼女の中にあるのだとしたら。
──トクン。
「?」
また、暖かくて優しい音が俺の肋骨の奥で鳴って、それはまるで、「そろそろ気付けよ、馬鹿」と俺に主張しているようだった。
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ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ここまで中々お話が進まなくてすみません!焦っている中そんな風に言って頂けてとても嬉しいです!これからキュンキュンを大量投下できるように頑張ります!!今後ともお楽しみ頂けたら幸いです!! (2018年11月24日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
桜 - すごい面白いです。てか、キュンキュンします。最高です。更新頑張ってください! (2018年11月24日 21時) (レス) id: fcb91909ae (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃんいつもありがとう!沖田隊長、シリーズでもコメントありがとう!いつも励まされてます!ちょっとでも誰かの心に響くものがあればいいなぁと思いながら書いてるから、そうなら嬉しいな!しーちゃんも色々忙しいと思うけど、しーちゃんのペースで頑張ってね! (2018年10月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - 君春続編おめんとさんです! ピー姉の小説は一文一文が丁寧で本当に尊敬しとります! ピー姉のペースで更新頑張ってね! (2018年10月2日 20時) (レス) id: 09ad90d8c3 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 続編に参りました!!少しずつになるとは思いますが精一杯お話を進めていくつもりですので、お楽しみ頂けたらなと思います!!頑張らせて頂きますのでよろしくお願いします!! (2018年10月1日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年10月1日 19時