【銀魂】君と共に生きる春 3【坂田銀時】

防御状態 ページ19

新八side


「いってらっしゃい、気を付けてくださいね」

「A姉によろしくネ」


と、Aさんの居る病院へと出掛けていく銀さんをそんな言葉で見送り、僕と神楽ちゃんは先程も居た居間にまた戻ってきた。ワイドショーを映したテレビ以外は無音の居間。銀さんの机の上に置いてある黒電話はやはり音を鳴らさないままであった。じっと電話を見据えてみるけれど、それは無機質にそこに佇んでいるだけであった。今月の依頼はどれほどあっただろうか、思い返してみても片手で数えられるくらいの回数しかないように思える。ペットの捜索も屋根の修理も雨漏りの修理も、今は何処からも依頼されていない。まぁ、僕達の助けを必要としないくらいに世の中の人達が平和に暮らしているのなら。困ったこともなく穏やかに生活できているのなら、それはそれでいいのだけれど。むしろ一般的にいいことだと言えるのだろうけれど。

…だが、それはそれとして、僕達万事屋の生活はまったくもって穏やかではいられなくなってしまうのだけれど。もう慣れたことではあるけれど、万事屋は今日も今日とて赤字。万年の赤を誇るこの小さな会社の金銭問題は日に日に深刻化してきている。そして、その社長がその危機に対してもやる気を見出ださないというのが、最大の問題点であった。

まぁそれも、いつものことなのだけれど。そんなことをいつものことだと割り切ることが出来てしまうくらいにはこの環境に慣れてしまっていて、慣れというのは恐ろしいなと僕は思う。


「なぁ駄眼鏡ェ」

「唐突に貶すのやめてくんない、防御状態が整ってないからさ」

「防御が整ってる時に貶したって面白くないダロ。そんなことより、」


そんなことよりって…と思いながら、それでも僕は口を開かずに神楽ちゃんの声を聞く。ソファーに座ってワイドショーに飽きたのかチャンネルを回すべくその機器を手に取りながら、神楽ちゃんは言う。


「銀ちゃんのこと、どう思うアルか」

「え、どうしようもないちゃらんぽらんだと思うよ、何を今更」

「んなことは私だってとっくのとうに分かってるネ。そうじゃなくて」


自分が居なくなっても尚ディスられるとは思っていないだろうな、と思いながら、そうじゃなくて？と僕は首をかしげる。


「銀ちゃんは、分かってると思うアルか？自分の気持ち」

「…どうだろうねぇ」


神楽ちゃんの向かいのソファーに腰掛けながらに、僕はそう呟いた。

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