【短編集】立ち話。【実況者】

甘 Ky 聖なる夜 ページ16

『クリスマスがことしもやーってくるー♪』

「でもAに彼氏はいない」

『うるさいキヨ！そっちこそいないくせに』

「うるせえ、帰り贅沢に飲みいこ」

『散財だぁぁっ』


ーーー


「俺にはおまかせで。
彼女には…アプリコットフィズで」

「かしこまりました。」


まさかまさかの洒落たバー。
カクテル全然知らないっ…


『「乾杯」』


2人で飲んでいるうちに、少しずつ酔いが回ってくる。
キヨのこんな大人っぽい雰囲気は初めてで、戸惑いつつも凄くドキドキしていた。


「ん、今度はAが何か頼んでよ」

『えぇっ』


メニューに目を通す。
あ、シェリー酒ってなんか…聞いたことある！
小説かなんかかな？悪いものじゃないはず！
私は…フランボワーズソーダとか美味しそう。


『私はフランボワーズソーダで。
彼にはシェリー酒をお願いします』

「！？
A…っ」


なんだかキヨの顔が赤い、気がする。
気のせい？


ーーー


「あー、うまかった」

『本当！美味しかった！』

「じゃ…行くか」

『え、』


手を引かれて歩いていくと、見えるのはホテル。
え、キヨ？


『ちょ、キヨっ！？』

「…俺だって、シたいんだけど」

『…』


その時のキヨの表情が色っぽくて、断れなかった。
あぁ、私たちは愛のないまま、こんな関係に堕ちていくんだ。
キヨはいつから、そういう気だったの？


ーーー


ベッドに寝かされるその手つきが、
まるで恋人のように優しくて、私の心に刺さる。
向こうはなんとも思っていなくても、
私は、私は大好きなのに。


「え、ちょ…何で泣いてんの!?」

『なんでもっ…ない…っ』

「愛してるよ」

『…え？』

「え？」

『え、今…』


キヨが、あっ、という顔をした。


「…カクテルに意味があるの、知ってる…しょ？」

『え！？』

「…うわああああ俺もう無理!!死ぬ!!」

『え、待って、やだ』

「…、シェリー酒、今夜この身を捧げる…って意味ね」


恥ずかしそうに言うキヨ。
私も恥ずかしい。


『キヨ、あのね、私も好きだよ』

「…えっ」

『だから、キヨになら、いいやって思ったの』

「バカ！」

『バカはどっちよ！性なる夜になるとこだったよ!?』

「ん？したっけさ、これからしよ。
とりあえずプレゼントね」


キスをして微笑むキヨがかっこよくて、
クリスマスの一夜を、彼に捧げた。





(アプリコットフィズって、振り向いてくださいって意味なんだね、可愛いなぁキヨw)

(うるせぇ！//)

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