No.43 ページ43
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目の前で俺の服の袖を掴みながら、眠ってしまった感宮。その寝顔は、いつもと違って幼い女の子のようだった。
「なぁ、どうしたんだよ。目、腫れてるぞ…」
様子がおかしいと思ったのは、俺の知らないところで感宮と八百万が出会ってからだった。
屋上にいたあの時、ただ目にゴミが入っただけじゃねぇだろと思って八百万に後から聞いたけど、返してくれたのは「昔、酷いことをした」という悲しそうな表情だけで。
感宮は感宮で何も話さなくなるし、一体何があったんだとずっとモヤモヤしていた。
そんな時だった、感宮と連絡がつかなくなったのは。
その上、八百万からは昨日開催されていたパーティーに感宮がいて、男と一緒にいたとか言うし本当意味が分かんねぇ。
「俺はお前を見てると、なんかこう…心臓のあたりが変になるんだ。どうしちまったんだろな。
…頼むから、俺みてぇに抱え込まないでくれ。見てらんねぇよ」
そこからはもう、無意識だったと思う。
感宮から一筋の涙が流れたから、拭き取ってやろうと空いている手の親指で拭い取った瞬間、その涙は光りはじめ、どこかに吸い込まれる感覚がしたんだ。
「ここは……」
『誰、あんた』
「…感宮？感宮なのか…？」
『その呼び方やめて、キライ』
「え…じゃあ、A、か？」
『ん』
目を開ければモノクロの世界の中で、下を見れば幼い感宮がいた。
ここはどこかと聞いても全く答えてくれなくて、終いには画用紙に絵を描いて遊び始める。……どうしろって言うんだ。
そのうち元に戻れるだろと思った俺は、幼いAの隣に胡座をかいて、画用紙に描かれる真っ黒の動物を眺めてみた。
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作者名：空涼
| 作成日時：2019年5月10日 19時
