No.42 ページ42
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「誰が嘘つきだ」
『へあっ…！？』
突然聞こえた声に、変な悲鳴を上げながら後ろへ向けば轟くんの姿がそこにあった。何故ここにいるのかという疑問で頭が真っ白になったけれど、轟くんはため息を吐いて教えてくれた。
「玄関開いてたぞ、無用心にも程がある。てか、ずっと携帯鳴らしてたのに無視なのかよ」
『え…』
どこにもない携帯に辺りを見回せば、離れた所にあるテーブルの上で携帯が光っている。
全く気づかなかった…と思いつつ起き上がろうとすれば、目眩がして頭を押さえる。そんな私を不思議に思ったのか、轟くんは眉間に皺を寄せて聞いてきた。
「熱…あんのか？」
『知らない…ほっといて…』
「ほっとけねぇだろ。待ってろ、何か買ってくる」
『え、ちょっ…』
「お」
無意識に掴んでしまった轟くんの服。何故自分がそんなことをしたのか分からないけれど、でも"寂しい"という気持ちがあるのは確かだった。
『どこにも、行かないで…お願い。
……八百万のとこにも、行かないで』
「なんで八百万が……分かった、どこにも行かねぇ」
自分でもらしくないと思う。でも涙と共に出てきてしまった願いに、止めることなんて出来なかったのだ。
轟くんはベッドの横に座って、私に寝るように促す。それに従って横になると、布団で顔を隠しながらボソリと呟いてみた。
『轟くんは…まだ、私のそばに居てくれる？』
「言っただろ、離れることなんざねぇって」
『そっか…そうだよね……ありがと』
「あぁ…」
なんて不思議なんだろう。先程まで轟くんが居なかっただけで独りぼっちだ、寂しい、怖い…って嫌な感情ばかりだったのに、今はすごく安心して心が温かい。
彼の袖に触れていた手が、無性に彼の手首へと触れたくなってしまった。
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作者名：空涼
| 作成日時：2019年5月10日 19時
