No.10 ページ10
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「ここに居たんだな」
『……なんで』
昼休み、屋上で心地よい風に吹かれながら昼食をとっていると、轟くんがまた突然現れた。
ポカンと口を開いている私とは正反対に、パンがいくつか入った袋をガサリと置きながら私の隣で胡座をかく。
いや、何普通に居座ってんの。と突っ込みたくなったけれど、轟くんが話し出すから口を噤む。
「俺、普段学食だから感宮のことあんま見なかったのか。ここに来て正解だったな」
ここに来て正解だなんて、轟くんは何を思ってそんなことを言っているのだろう。
あまりに謎すぎて、私は考えることをやめてゼリー飲料を吸う。するとパンをかじっていた轟くんが私をじっと見つめてきた。
『…何ですか』
「いや、昼飯それだけなのかと思って。俺はいつも蕎麦なんだが、たまにはパンも良いぞ」
『そんなの知らないです』
そんな情報聞かされても困る。それに私の昼食はゼリー飲料だけではない、カロリーマイトもあるのだ。…パッケージがオールマイトなのは気にくわないけれど。
睨むようにそのパッケージを見つめれば、案の定彼はキョトンとした顔で尋ねてくる。
「オールマイト、好きなのか？」
『…嫌いです。ヒーローなんて』
子供が皆、この世界のNo. 1ヒーロー、オールマイトに憧れると思ったら大間違いだ。ヒーローなんて誰もが可哀想と思った人しか助けない。
陰でひっそり苦しんでいる者には気づかないんだ。
幼少期にそれを学んだ私は、助けを求めることを諦めた。一人で何とかしてやると、ひとりぼっちの世界で懸命に生きてきたのだ。
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作者名：空涼
| 作成日時：2019年5月10日 19時
