No.09 ページ9
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こんなに足取りが軽いことなんて、いつぶりだろうか。いや、そもそも滅多にない気がする。
たった一言、「昨日はごめんなさい」と言えただけなのに。それだけで気分が少し上がるだなんて、私は単純だと思う。
彼はあの後、俺も悪かったと丁寧に謝ってくれた。
「まだ名乗ってなかったよな。俺は轟焦凍、ヒーロー科1年A組だ」
そしてやっと知ることの出来た彼…轟くんの名前。流石に轟くんだけに名乗らせるのもアレか、と私も自分の名前とクラスを伝えた。
『感宮Aです。1年C組普通科にいます』
でも轟くんには悪いけれど、多分もう会うことはないと思う。というか関わりたくない。だって傷つくのはもう疲れたから。
なのに胸のあたりがチクっとするのは何故だろう、なんてぼんやり考えつつも教室の前で深呼吸をして足を踏み入れる。
「見たー？昨日のドラマ！」
「朝起きたら、家出る20分前で焦ったわぁ」
「今日、体育あるみたいだよ！」
そして、今日も今日とて一人の空間に包まれ、イヤホンを耳に入れた。
頭に流れ込んでくるのは心地よいリズムで、音楽を聞いている間は心の声が全く聞こえてこないから幸せだ。
その上、窓側の一番後ろという最高な席。頬杖をつきながら窓の外を眺めると、門付近に目立つ紅白髪の轟くんがいた。
そういや、轟くんを置いてダッシュしてきたんだったっけ。
何とか間に合ったんだ、と轟くんを見ていたわけだけれど、もう私には関係ないと自分に言い聞かせて音楽の世界に入り込む。
これからシロに会いに行く時は、時間も注意しないとダメだなーと作戦を考えたのだった。
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作者名：空涼
| 作成日時：2019年5月10日 19時
