64話(無惨討伐後) ページ16
義勇さんとわたしは桜並木の道を歩いている。
わたしが桜の花びらを拾っていると、義勇さんは桜に夢中なのか先に行ってしまう。
急いで追いかける。
桜を見る義勇さんの目はとてもきらきらしていて、綺麗だった。
その儚い表情に、わたしはどんな綺麗な花よりも美しいと感じた。
生きる希望に満ち溢れているようだが、すぐにでも散ってしまうようで、慌てて手を掴む。
「どうした?」
『あ、いえ。…義勇さんがどこかに行ってしまうような感じがして、』
「そうか。」
なにか考えているようだ。
「A、俺はお前を良き道へと導くことができたのだろうか。無事に育てられただろうか。」
『もちろんです。義勇さんと過ごす日々はわたしにとって、とっても大切なものになっています。』
「そうか。」
少しの沈黙が流れる。
桜は風によって多くの花びらを舞いらせている。
「桜の花言葉に"わたしを忘れないで"というものがある。」
確か、どこか違う国での花言葉だっただろうか。
そして義勇さんは、桜を映していた目をこちらに向けた。
「こんなこと言うべきではないかもしれないが、桜が咲いている短い時間の間だけでいい、桜を見て、俺を思い出して欲しい。」
意外だった。
義勇さんは意地でも忘れて欲しいと言うと思っていた。
義勇さんの本音が聞けたようで、なんだか嬉しい。
わたしは笑って言う。
『365日、一瞬でも忘れるわけないじゃないですか。』
「そうか。ありがとう。」
義勇さんは、喜んでいるような、悲しんでいるような、そんな表情をしていた。
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作者名:咲 | 作成日時:2022年3月13日 15時