痛みの正体 ページ49
綾乃に頭を撫でられて、やっと痛みの正体を知った。苦しみの理由が分かった。
「私……、崎山さんが、好き…」
「うん。私は知ってたわよ」
「大好き……。なんで…今、気付くかなぁ…」
失って、はじめて気付いた自分の気持ち。それを向ける相手を今日、Aはフッてきたのだ。
胸が痛くて、苦しくて、つばさが言っていた言葉がやっと分かった気がした。
『早く俺のこと好きになればいいのに。そうすれば少しは分かるんじゃない？』
今更つばさの言葉たちが浮かんでは消えていく。たくさん声をかけてくれた彼に何ひとつ応えてあげられていない。
Aに向けられた笑顔も、優しい言葉も、髪を撫でる大きな手も全部全部、いつの間にか大好きになっていた。
「崎山さん…」
次から次へと溢れる涙が胸の痛みを訴える。綾乃に抱きしめられながら、つばさに抱きしめられた時のことを思い出した。
綾乃よりもずっと大きくて、腕も指もガッシリとしていて、温かかった。小さなAはつばさの腕に埋もれてしまうのに、全然苦しくなくて。優しい腕に抱きしめられて、嬉しかった。
初恋を、気付くと同時にそれは失恋に変わる。Aがそうしたのだ。自業自得。なのに、悲しくて涙が止まらなかった。
次に会う時、どんな顔をして会えばいいのか分からない。
別れ際、彼も泣いていた。泣くほどAに恋をしていたのだと思うと嬉しくて、それを拒否してしまった自分を呪いたくなる。
「お姉ちゃん、崎山さんも…泣いてた」
「そうね。辛いわよね」
あまり見たことがなかった。好きな人の涙がこんなに痛いだなんて思っても見なかった。
今からでもあの後ろ姿を追いかけて、手を取って好きだと言いたい。そうしたら彼は笑顔で『俺も好きだよ』と言ってくれるだろうか。でも、そんなことはできない。身を切るような想いで諦めようとしている彼に申し訳ない。
「お姉ちゃん、崎山さん……泣いてるのかな？」
「…そうかもしれないわね」
「……嫌だなぁ。……私のせい、だけど。あの人は、笑顔が……よく似合うから」
「うん」
「あの、笑顔で……名前を…呼んでくれるから、嬉しくて…。一緒にいるだけで…本当に楽しそうだから…私も、楽しくて…。あの人の…側にいたい」
「じゃあ、そうすればいいわ。崎山さんも望んでいるはずよ」
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星ノ宮昴(プロフ) - westさん» ありがとうございます！そう言っていただけると励みになります！ノリで書いているので、更新はかなり不定期ですが、よろしくお願いします (2021年3月7日 23時) (
レス) id: 0939823488 (このIDを非表示/違反報告)
west - コメント失礼します！読んでてすごい面白くて、あっという間に読んでしまいました！これからも陰ながら応援させていただきます！ (2021年3月7日 22時) (レス) id: 4daf55a770 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年2月3日 1時
