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「へえ、ここがカジノ…初めて来ました」
赤井に連れてこられたその場所は、シックなカクテルドレスやワンピース、スレンダードレスで装った女性、フォーマルスーツを着こなした男性で賑わっていた。
「ホー、君はてっきり経験があるかと思っていたが」
「馬鹿言わないで下さい。潜入捜査をしているのにカジノで遊ぶ時間があるわけないですよ。それと…タイは不要だったんですか」
「今日はいらない。ただ、会見がある時なんかは必要だな。」
ざわざわと、スロットの程近くにあるステージの周りが騒がしくなってきた。
少し人だかりができているようだ。
「ああ…Chloeのショーか。君も見るといい」
「例の歌姫ですか。」
「『4オクターブの歌姫』、彼女の異名だよ。」
コツリ、と小さなヒールの音が響き、赤いAラインドレスに身を包み、綺麗な黒髪を結い上げた女が舞台へと登っていく。
素直に言おう。
俺は魅了された。歌声、美貌に。
こんな美しい歌声は聴いたことがない、純粋に称賛の気持ちを込めて彼女に拍手を送った。
そして、お辞儀から頭をあげた彼女と目が合った。
ほんの少し、微笑まれたように思えた。
その後赤井に連れられスロットの台へ座り、プレイをして見る。隣の赤井はある程度当てているようだ。
『Hi、お兄さんパラディソへようこそ。楽しんでる?』
ふと声をかけられ、咄嗟に身構えてしまった。
後ろにいたのはさっき歌っていた女、Chloe。
『Chloeか。君に話しかけられるなんて光栄だなRey』
『へえ…こっちのお兄さんReyって言うの。貴方は?』
『俺はSyu。彼は俺の友人だ』
『そう…てっきり恋人かと思ったわ。とてもcoolだったから』
『ところで、Chloe。あなたって…アジア系の人ですか?』
『Rey、名前知ってたのね…ええ、父も母も日本人。私はアメリカで生まれ育ったけど、時折日本に行ってたから日本語も話せるけど…それが?』
「なるほどな、Rey。黒髪をみて日本が恋しくなったのか」
「黙れSyu、違いますよ。気になっただけです」
『あなた達…面白い人ね。これ、あげるわ』
ぽい、と何かを赤井に投げて頬にキスしたかと思えば、ひらひらと手を振り去っていく彼女。
「赤井、なんですかそれ」
「ルームキーか…部屋番号は6001」
「行くしか、ないみたいですね」
「ああ…そのようだ」
おそらく彼女の部屋のカードキーであろうそれをポケットに入れ台に向き直るとコインがジャラリと出てくる。
『Rey、ジャックポットだ』
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作者名:梨櫻 | 作成日時:2017年7月23日 1時