SNOW MAGIC（緑） (ページ22)

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あの時、雪が降らなければこんな想いをすることは無かったはず

もっと長い間この心に閉まっておいた想いが、溢れ出すことは無かった気がする

忘れかけていたピースの１つ１つが綺麗にハマっていく
もしかしたら、2人が付き合うことになるのかもしれない
俺はそれを心から祝福できるのだろうか

「あべちゃん！」

後ろに乗っかった重み
少しだけ鼻にくる甘い匂い

「なに？佐久間」

小さくて、守りたくなるような存在

でも、アニメや漫画が大好き
ハイテンションで、周りが見えてる

そんな所が春ちゃんと似ているのかもしれない

「んーん、なにか悩んでますなぁ笑」

ﾆﾀﾆﾀ笑っていた佐久間も、

俺のテンションが想像以上に低かったのか一瞬にして真剣な顔付きに変わる

「何があったのか知らねーけど、あべちゃんらしくねーよ」

「ん、」

何も言わずにただ隣を歩いてくれている存在

これだけでも心が温まっていった

不安なんて無くならない
ううん、無くなるはずがない

でも何故か心が軽くなった

今すぐ、春ちゃんに『好き』だと伝えたい、
今すぐ、佐久間のいるこの前で『笑顔』になりたい

思うことは沢山ある

でも、それが実行できない

何もかも不運な方向に物事が進んでいく

きっと、
きっと、
いや、
絶対そうだ

俺の思うこととは反対に、足は自分の家の方へ向かっていく

「いい報告待ってるぜ～！連絡でもしろよな～」

俺が今から何をするのか、直ぐにわかったのだろう

後ろで聞こえた佐久間の声

それを俺自身のバネにし、地面を踏み出した

･

あれから何分走ったのだろう

気がつくと、家の前

2人の影が見えて、笑いあってる姿が目に映る

その瞬間苦しくなる胸
2人の顔が一気に真剣な顔に変わって、1人の顔が赤く染る

「ごめんなさい」

優しい声が聞こえて、涙目になる1人の瞳

『いいよ、最初からわかってたし』
なんて言ってる人の瞳から零れ落ちる涙

苦しそうに泣いてるとこを見て、
この人もこの子の事が好きだったんだって初めて知った

そして、あの時に苦しそうな表情(かお)をした意味がやっとわかった

俺の横を通り過ぎる

悲しそうな表情が一気に変わって、俺に向かって歩く
『俺じゃダメなんだ…………あべべが笑顔にさしてやって』

苦しそうな声で言うから、余計に俺が期待してしまうんだ