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失うのは何時も一瞬で、
手に入れることはあんなにも、あんなにも難しいのに、
失うことは、いとも簡単なのだから心の底から憎らしい。
『………ぁ…』
甘かった。
私一人で運命を変えられるなんて、自意識過剰にも程がある。
『……ぃ、や……』
世界は残酷で。
私や彼一人や二人不幸な目にあっても、何時も知らんぷりをする。
『いやああぁぁぁぁああああぁぁ────っ！！！』
頭はこんな風に冷静に語っているのに、
喉から出るのは絶叫だ。
彼の腹部から血が止まらない。
まるで絨毯を敷くように地面が赤く染まっていく。
最期に私の名前を呼んで。優しい微笑みを残して。
彼は死んだ。
穏やかな顔。私を見て、酷く安心したように。
『いや……っいやぁ！！如何してっ！！こん、な…ぁ！如何して！？』
使い物に為らない思考を無理矢理巡らせて。何か助かる方法は無いかと考えて、考えて。何も見付からなくて、また絶望して。
反射的に血が流れる彼の腹部を抑えても、私の手が赤くなるだけ。
『如何、して……私、なんかを……っ！』
私は、間違えた。
こんな筈じゃなかったのに。
「……無駄なことを。こんなことしていなかったら勝てていたというのに」
憐れむように、血に塗れた彼の身体を見下ろした。
奴の云う通り。勝てた、筈だったのに。
───相川俊孝。やっとこの男の正体が掴めた。
拠点は街から外れた古い洋館。見た目の年齢は三十もいってないくらい。
組織は組んでおらず、彼一人。
異能力は、「万物昇天」。
男の持つ本から召喚される、"見えない化け物"。
初見殺しにも程がある。見えない化け物、など。
苦戦した。見えない以上、避けるのも難しい。
然し闘っているうちに、大きな抜け穴に気付いた。
それは、影があること。
姿こそは見えないものの───そこに存在する以上、影が出来るということだ。
それに気付いた、から。…勝てる筈だった。
だが。突如として男は攻撃の標的を、彼から私に変えたのだ。
きっとそれも計算のうち。
男は怖いくらい頭が回る奴だったのだ。
本来なら私が死ぬ筈だった。
あんなの、私じゃ避けられない。
なのに、なのに。
咄嗟の判断だったのか───彼は、私を庇った。
庇って、しまった。
私を守るようにと、両手を広げて。
穏やかな微笑みを刻んで。
私は叫んだ。喉から血の味がした。
──嗚呼、こんな結末になるなんて！
『……お前は、絶対に許さない…』
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ユリア(プロフ) - すごくいいお話でした！主人公と相手のそれぞれの気持ちが書かれた構成があまりないので、読んでいてとても新鮮でした！ありがとうございます。 (2023年2月13日 21時) (
レス) @page48 id: 4dc59746f6 (このIDを非表示/違反報告)
篠ノ井(プロフ) - とても良いお話でした‼︎与謝野先生と組んだら最強の異能だなと、考えちゃいました。素敵な作品に出逢えて良かったです。ありがとうございました。。 (2022年1月28日 3時) (レス) @page50 id: 074aca8682 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ふたりともとっても優しくて、お互いのことをちゃんと想い合っていて本当に涙なしには読めないくらい感動しました。ふたりの未来に幸せが訪れますように！！このような素敵な作品に出逢えてとても良かったです！！素敵な作品をありがとうございました。 (2021年12月13日 13時) (レス) @page50 id: 5d3deb0d2a (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - 一樺さん» わー！嬉しいです！読んでくださりありがとうございましたー！ (2020年6月30日 16時) (レス) id: 133caaaf3b (このIDを非表示/違反報告)
一樺(プロフ) - あぁ…よかった…素晴らしいお話でした。もう…すごく泣いちゃって…いいお話をありがとうございました！！ (2020年6月21日 20時) (レス) id: e734b1c435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お湯 | 作成日時：2019年3月10日 20時
