言葉に詰まる ページ36
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あの中原さんとの再開だった。
驚いた。真逆こんな所で会うとは。
『中原さん、如何して此処に?』
「俺の台詞だぞそれ。手前こそ、こんな時間に此処で何してンだ?普通仕事だろ」
『…それが、ちょっと体調が悪くなってしまいまして…』
「───…」
無言。
中原さんはただじっと、私の目を見つめている。
気まずい。兎に角気まずい。
何故そこでこんなに黙るのか、頭の中がはてなマークで埋め尽くされている途中だった。
沈黙に耐えきれなくなって、
『あの、中原さん、』
「…手前、なんつー目ェしてやがる」
固い声が、潮風に攫われていく。
一瞬、何を云われたか分からなかった。
中原さんは目を見開いて、信じらんねェ、とでも云う様な顔をしていた。
目?私の目が、一体何だと云うのか。
「…真逆、自覚してないとは云わ無ェよな?」
『目…?顔色が悪いのは知っていますが』
その悪い顔色だという事を知った鏡は、今朝粉々に割ってしまったものだが。
中原さんは深い溜息を吐くと、「…ついて来い」とだけ云ってスタスタ前を歩き始めた。
はて。
# # #
連れて来られたのはすぐ近くの公園だった。
私はベンチに座り、中原さんはすぐ横のフェンスにもたれかかっている。
『…あの』
中原さんは再び私に視線を移した後、静かに口を開いた。
「…やったのか」
『…え?』
「──人を、殺したか」
心臓を鷲掴みにされた様だった。
当然ながら、そんな事一度もこの人に口に出していなかったのだから。
それ以上に、それを見抜いた事に驚いた。
彼は「矢っ張りか」、と俯きながら呟いた。
『…何故分かったんですか』
「分かるンだよ。普通の人間と目が違ェ。初めて人を殺した時、人は皆同じ様な目をする。
…手前は違ェみたいだがな」
『…』
矢張り分かるものなのか。
普段から人の死に触れ続けている、中原さんだからこそ。
私の目が違う、と云われた。
そうだ。だって私は、初めて人を殺しても、涙も恐怖も湧かなかった。
普通の人間なら、そこで狂うべきだった。
『嫌だ』と、叫ぶべきだった。
人を殺した事より、人を殺しても冷静だった事に、心底自分に失望をしたのだ。
私は、自らの殺人を否定せずに受け入れた。まるでそれが、当たり前であるかの様に。
「…一体、何をされた?…いいや、違ェな。何を"見た"?」
『それは…』
言葉に詰まる。
だって、その事は太宰さんにも話していないのだから。
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お湯(プロフ) - のりばやしさん» またコメントありがとうございます…!感動してくださったならなによりです!新作も頑張ります(*´`*) (2018年8月9日 19時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - もう一度失礼します!!完結おめでとうございます!!めちゃくちゃ感動しました!!話の終わらせ方が素晴らしい!!新作待ってます! (2018年8月9日 18時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - のりばやしさん» そう言ってくださり嬉しいです!ありがとうございます〜!! (2018年5月24日 18時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - 話の展開と語彙力に心を動かされます。更新頑張ってください!!(*^ω^*) (2018年5月23日 19時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
お湯(プロフ) - すばるさん» 返信遅くなって申し訳ございません…!!ありがとうございます!!可愛い太宰さん、いいですよね…!(*´▽`*) (2018年2月23日 20時) (レス) id: 2451ee7fcd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お湯 | 作成日時:2017年10月9日 18時