嘘つき ページ1
番号を書いた紙を彼に渡すと、
彼もまた 嬉しそうにそれを受け取った。
「時差があるから返信に時間がかかるかもしれないけど、いつでもSMSを送ってくれて構わないよ。それなら名前もバレないしね。」
「うん！私も試合の報告、待ってるね。」
その後大崎さんが部屋の電気を消しにきても、暫くの間私たちが喋っていたのは言うまでもない。
「明日、いつ頃ここを出るの？」
「朝早くだよ。」
「じゃあ朝、最後にまた話せる？」
「…うん。」
その“うん”が どこか頼りなくて
彼が知らないうちに 消えてしまうんじゃないかと
私はどこか不安になった。
行かないでって言いたい。言えない。
抱きしめてって言いたい。言えるわけがない。
離れたくない。離れたくない、けど。
いくらそう思っても、地球は変わらず同じ速度で自転し続けるのだ。
時間は止まらずに流れていく。
夜は絶対に明けてしまう。
その夜は不安で眠れなくて、浅い眠りについては何度も何度も目を開けた。
その度に彼の姿を確認して、胸をほっと撫で下ろしていたけど
「…………。」
彼が“嘘つき”と分かったのは
朝日が地平線に顔を出すよりも前のことだった。
「……いな、い。」
薄暗い部屋の中に
空っぽのベッドがぼやけて見える。
「…ばか。」
突然嵐のように涙が湧き出て、ぼつりぼつりと落ちて行った。
彼が退院して、嬉しかった。
彼の病気が治って、本当に嬉しかった。
でも今
彼がついた最後の優しい嘘を
そんな簡単に飲み込めるわけがないんだ。
「…ん？」
涙でぼやける視界の中、枕元に置いてある一枚の紙切れに気がついた。
彼が来てからめっきり使わなくなったベッドのライトをつけて、確認する。
「……なに、それ。」
書かれている文字は、たったの一行だった。
『君は、僕の生きる理由だ。』
初めて、彼の字をこの目で見た。
中学生離れした綺麗な字。
あなたはいつも
こうやって私の心を揺さぶるのね。
「……っ…。」
ベッドから起き上がって、乱暴に靴を履く。
たった数文字の言葉でも、
私の理性を飛ばしてしまうには充分すぎるようだった。
・消灯時間から起床時間の間は外に出ないこと。
・入院着やパジャマのまま、外に出ないこと。
・必ず担当の看護師に声をかけること。
その条件を、全部破った。
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やっさん(プロフ) - もちまる。さん» 素晴らしい内容です。夢主さん、良かったですね(^o^)v。しかし、人生の本当の勝負はこれからですぞ〜(^^) (2020年10月27日 20時) (
レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
一郎太と士郎が好きな者♪リン(プロフ) - 何か今更感溢れてるんですけど、完結おめでとうございます！(一年ぐらいたってるのにww) 私が占ツクを始めるきっかけとなったこの作品。 完成度が高くて、私もこんな作品を書けるような作者になりたいです！ ありがとうございました！！ (2020年4月22日 1時) (レス) id: e6fb3fbc8a (このIDを非表示/違反報告)
きらら(プロフ) - やーだもう…青春…たまたま見つけて流れ読みしてきたら3時間前に完結してたんですけど…完結おめでとうございます！ (2020年3月30日 3時) (レス) id: 36a6836253 (このIDを非表示/違反報告)
shoto(プロフ) - もっと評価されるべき。最高。こんな最高な作品と夢主ちゃん、野坂君を書いてくれて本当にありがとうございます。 (2020年3月29日 22時) (レス) id: ef163209c8 (このIDを非表示/違反報告)
ユキウサギ - とても良かったです！！！！ 野坂さん最高ッス！！！！！！！！ (2020年2月27日 22時) (レス) id: ce069fbf80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2019年4月27日 23時
