＃54 比較 ページ4
.
『……ねぇ、もう行った?』
ジャンが立ち去った後、ゆっくりとAが戻ってきた。
「行ったよ。…つーか、何で一人で逃げたんだよ」
『……だって、ジャンが歩いてくる音が聞こえたから』
「自分だけ逃げんなよ」
『…ごめん。どうしても見つかりたくなかったから』
「いや、収穫はあった」
『なに?』
「ジャンは告白を断った。まだ望みはあると思うぞ」
『何の話?』
「お前のことだよ」
四人の視線がAに集まる。
『私…?』
「お前だってジャンのこと好きなんだろ? いっそのこと告白しろよ」
『む、無理だよそんな……』
「言ってみなきゃわかんねぇって」
『でも、』
「少なくともさっきの奴はお前より勇気があるぞ」
「ユミル! 何でそんな意地悪言うの?」
「本当のことだろ。自分の気持ちを言ってねぇくせに何で駄目だって決めつけんだよ」
ユミルの言うとおりだ。私はまだ、ジャンに気持ちを伝えていない。
けど―
そういう風に見れねぇ
私にだってあれを言われる可能性は十分ある。
いや、十分すぎるくらいだ。
もし、気まずくなったら?
今までと同じ生活ができるわけがない。
いつもそうだ。深く考えてしまうせいで一歩も前に進めない。
「……ユミル、Aが困ってる。この話は終わりにしよう」
――――――――
「……A、元気出して」
『…………ベルトルト』
「…僕何かが言っても説得力がないけど、きっと大丈夫だよ」
『……』
「Aが思っているよりずっと、ジャンはAのことよく思ってるから」
『…ありがとう。少し気分が落ち着いたよ』
先程よりも幾らか心が軽くなった気がする。
私だってジャンが好きだ。
怖じ気づいてばかりいられない。時間がかかってもいい。ちゃんと自分の気持ちを伝えるんだ。
そう心に誓った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
S,JSB,K(プロフ) - カレンさん» コメントありがとうございます。これからも頑張ります! (2018年7月31日 0時) (
レス) id: 31aebc4975 (このIDを非表示/違反報告)
カレン(プロフ) - 初めまして。この小説はとっても面白いです！そして何よりもジャンがめっちゃカッコイイです。これからも頑張りすぎないようにほどほどに頑張って下さい！ (2018年7月31日 0時) (レス) id: e2d0d40c3a (このIDを非表示/違反報告)
S,JSB,K(プロフ) - 智真さん» 気を使っていただきありがとうございます。最近あまり更新していなかったので、今日か明日辺りには更新します。 (2018年7月29日 19時) (レス) id: 31aebc4975 (このIDを非表示/違反報告)
智真(プロフ) - 初めまして！次、どうなっちゃうんだろうってドキドキしながら読ませてもらってます。すっごく面白いです！！これからも更新頑張ってください（でも、無理はしないで下さいね）応援してます(o^^o) (2018年7月29日 18時) (レス) id: 809fa61cec (このIDを非表示/違反報告)
S,JSB,K(プロフ) - かぐやさん» ありがとうございます。また、近々更新しますね。 (2018年7月15日 18時) (レス) id: 31aebc4975 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
