山猫達には「兄」がいるらしい(金カム) (ページ3)

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壱ページ3

Noside

「なあ聞いた勇作？」

兵舎の廊下を歩く一人が言う。

勇「なんですか兄さん？」

彼を『兄さん』と呼ぶ弟と思われるその人物はあまり彼と似通っていなかった。

「…百が造反したらしいぞ」

勇「…兄さん、悪い冗談はやめてください」

「悪ィがこれは事実だ」

二人の会話の内容は、先日鶴見中尉を裏切った尾形上等兵こと尾形百之助についてである。

「前に見舞いに行ったときなんだがな？百が『机の裏』っつってたから見たらな？」

そこで彼…橘雅之軍曹は花沢勇作旗手に一枚の紙切れを見せた。

勇「…『鶴』？ですか…」

そこには小さく『鶴』の字が書かれていた。

「これから百が何を言いたかったか分かるか？勇作」

勇「『鶴』…というとやはり鶴見中尉殿のことでしょうね。兄様は多分戻ってこない…」

「それならな、勇作」

　「俺ら軍やめようぜ？」

雅之は薄ら笑みを浮かべながら勇作へそう囁いた。

勇「ええええ゛？！」

勇「何言ってるんですか兄さん？！私達も造反なんてしたらﾓｺﾞ」

青い顔、焦った様子で反論する勇作の口を手で塞ぎ、雅之は話の続きをする。

「違う、俺たちは造反するんじゃない。普通に軍を辞めるんだ。言い訳は…うーん、母が危篤で
うんぬんかんぬんとか」

勇「そのうんぬんかんぬんとは一体何なのですか…」

「まぁそこは適当に誤魔化すんだよ。それに…」

「男兄弟というのは一緒に悪さもするもんだろう？」

勇「(兄さん…今日もお美しいです////)…わかりました。では明日上に報告しましょう」

「はっはは！まあそれで通らなければ造反しなきゃなんねぇけどな！」

その一言に勇作は再び青い顔をするのであった