山猫達には「兄」がいるらしい(金カム) (ページ11)

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雅之side

いつもは目覚まし代わりとなっている小鳥のさえずりも、新兵たちの訓練の音も聞こえない。

辺りが暗闇に包まれている中、勇作と俺は兵舎裏にいた。

「いやーまさか勇作少尉が窓から出ようとしてケツ引っかかって出れなかったたなんて誰も思わねぇだろうなぁww」

勇「兄さんもうその話はやめてください…」

時間になっても勇作が来なかったため部屋を見に行ってみれば窓から上半身だけ窓から出た状態を発見したのはある意味収穫だろう。

(百にもあとで話してやろ…)

ニヤけそうになる顔をなんとか抑えつつ、勇作を兵舎の裏山へ誘導する。

「確か土方達はこの前小樽の銀行を襲撃したとか聞いたからな…当たるとしたらその周辺を狙って行かなきゃならんか…」

金銭的余裕も体力も百のことを考えればどうといったことはないが、今回は一人で動くわけにはいかない。

俺が百を追って師団を抜けることはとっくに予測されているだろう。師団に勇作を残しておけば鶴見がどう動くかなど想像しなくてもわかる。

裏山を抜け、近くの街道に出た頃にはもう朝日が顔をのぞかせ始めていた。

「さあ、急ぐか！総司！」

勇「切り替えが早すぎますよ一(はじめ)さん！」

勇作と前日の打ち合わせで決めたことの一つ。それは偽名を使うことだ。

師団と接触する可能性も拭いきれない。それに勇作は突然の芝居(現代風にいうと「あどりぶ」というものだな)が苦手らしく、この間の上司に辞任を伝えに行ったときも白目をむきかけていたのだからたまったものじゃない。

そして偽名の由来、というか理由。
土方歳三を探す上でいちいち通りすがりの人間の顔を覗き込んで見るわけにもいかないため、彼が「反応する可能性がある」偽名を使うことでかなりの手間が省けると思ったからだ。
安直すぎるかとも思ったがまあこれぐらいしか方法がないのだから仕方がない。

まだどこか閑散としている道を歩みながらこれからの流れを再び確認する。

まずは土方と接触し、百を見つける。これが一番大切な目標。

そこからこの金塊争奪戦に参加するのかは俺のプ〜リティで〜キュ〜アキュ〜(尾・勇「やめてくれ/ください」)…な弟たちに決めてもらうとしよう。

あとは俺のーーーー…を見つけるのもこの旅の最終目標になるかもしれないな…