ウチとアンタと、キミの言の葉10

第377話 ページ7

簓side


明るい雰囲気で包まれたAの別れを見送る夜の祝宴は、Aが眠り始めた頃合いに静寂に包まれる


引っ張りだこだった今宵の主演も、こない自分が色んなもんに愛されるなんて知らずにきっと普段と違う気の遣い方をして疲れてエネルギーが枯れてもうたんやろ


俺も自分が本来の世界ではそうやって色んな人間と関わる機会が増えてきて、そういう疲れ方をするのは分かる


だけどそれは疲れとしては明るくて幸せな疲れで、きっと疲れて眠ったにしても良い眠りの中に今宵の人気者の俺の妹は落ちたんやないかと思う


反面で自由気ままに寝こけた妹を見て、それを取り巻く兄ちゃんらは笑う事を忘れて微妙に嫌な顔をしよる


きっと皆口には出さないだけで、Aの事が好きで別れを惜しんどるって分かる顔や


簓「…皆に愛されとったんやね、Aは

下手したら俺よりも人気者なんとちゃう？」


アズール「…？それはそうでしょうね

貴方とは僕達は今日初めて巡り会ったのですから」


簓「そういう事と違くて…いや、兄ちゃんらに分かるはずもないわな

おおきにな、今までAと一緒にいてくれて」


ジェイド「…」


簓「今まで1人にせぇへんと見守ってくれておおきに

妹見てれば分かるで、皆に愛されてAは幸せやったに決まってるって」


アズール「…1人にしないでいた訳ではありませんよ

何となく惰性で今まで付き合ってきただけです

特に何か特別な事をしたつもりでもありませんし、美談として消化されていくのは腑に落ちないんですよ」


ジェイド「結局向こうからこっちに近付いて来た試しもありませんでしたしね」


簓「それでもええんやよ

ただ一緒にいた、その事だけで十分なんや」


フロイド「…」


簓「兄ちゃんらがおったからAは笑えてたん

それで十分なんやよ、兄ちゃんらの顔見てたら分かるわ

皆もきっとAの事好きやったんやろ？」


アズール「…」


簓「多分Aも本音では分こてるよ

こいつもいけずでちょっぴり素直やない所あるからな」


アズール「…まるで僕達が素直じゃない、と言っているように聞こえますが？」


簓「素直やないやろ

プライドがある言うんはええ事やけど、捻くれてしもたらあかんで

時に素直に、時に少し悪いくらいが丁度ええんよ」


そない言葉のやり取りを交わして、俺は寝こけた妹を自分の腕に拾っていた

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