ウチとアンタと、キミの言の葉10

第380話 ページ10

簓side


そして鏡のある部屋へ向かえば、さっき会うた黒と白の服の先生がおる


クルーウェル「…帰り道の確保はできているぞ

帰れるかはまた別の問題になるが」


簓「そうなん？仕組み的に色々ややこいんやね」


クルーウェル「そもそも異世界の住人を3人も引き入れる事が可能な時点で奇跡だ

このままあまりにも受け入れていると世界の調律が崩れる、この世界の秩序のためにもどうにか帰ってもらえないと俺達も困るんだ」


簓「…まぁそれは仕方ないか

ほんならあの女の子も帰れるんの？」


クルーウェル「…？ここに来て他人の心配か？」


簓「日本っていうんは相手の事を考える風潮のある世界なんよ

せやから癖みたいなもんや」


クルーウェル「…成る程な

それは随分と幸福な世の中に生きていたという事だろう」


簓「…」


クルーウェル「まぁそれは良い

あの仔犬も何とか帰る手立ては準備する、まずはお前達だ」


そない言われて、導かれるままに大きな鏡の前に俺は立つ


闇の鏡「…汝の名を告げよ」


簓「うおっと！？喋るんかいな！？

言うてや、驚いてもうたわ」


クルーウェル「…兄妹揃って反応がよく似ているな

まぁ良い、早く帰れ」


簓「…えぇと…名前言えばええんの？

白膠木簓やで」


そない言えば、鏡はやがて何か答えを俺に提示する


闇の鏡「…汝の魂の在処は…」


簓「…」


闇の鏡「…ニホン

H暦4年、日付は2月の12日

汝の魂はその日付の午後11時に存在する」


簓「…！！」


闇の鏡「そして汝の抱える存在の証明は、汝の手により果たされる」


簓「…帰れるんや言う事？」


クルーウェル「闇の鏡が形を認識できればその世界に存在すると言えるのだろう

連れて行け、もう二度と帰って来るなよ」


簓「…良かった、ホンマに」


クルーウェル「…」


簓「…良かったぁ…

…帰ろうな、Aちゃん」


俺は眠りから覚めないままの妹を力一杯抱きしめて、つい色々な感動で泣き笑いを浮かべる


一生の間に流れる時間に比べれば俺が待っていた時間なんてなんぼでもないんやと思う


でも待っている間は長くて悪夢みたいに流れる時間やったんは事実やから、夢から明けてようやく自分の世界が取り戻されるんや言う感覚に酷い安心感と期待と喜びを抱く


そんな心を抱えたまま、俺は鏡を抜ける


簓「…またな、楽しい夢の世界(ワンダーランド)

…おおきに」


そない言うて、俺は自分の世界に妹を抱いたまま自分の足で戻って行っていた

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