ウチとアンタと、キミの言の葉9 (ページ26)

今日:17 hit、昨日:14 hit、合計:8,386 hit

第348話ページ26

簓「…皆よう見とるな

俺の妹の事俺よりよう面倒見とったんやない？」

アズール「知りませんよ、たかが1年と約半年を共に過ごしていただけの話です

彼女がどんな人間かを理解するには時間があまりにも足りない」

簓「…皆に見守られて、Aはきっと幸せやったと思うで

俺にできへん事がきっとここの兄ちゃんらにはできたんやろな

子供に戻れない事が分かるから、子供に戻れるこの場所がきっと自分の生きる場所やって思て帰るのを躊躇っとったんやろ」

アズール「…は？」

簓「…大人になるって言うんはな、自分の可能性を否定する事とよう似とる

そこから先は頭打ちで、何があっても多少の事では変わる事なんてあらへん

冷めてもうたんよ、きっとAの心は」

アズール「…」

簓「せやけど、温め直してそれを変えていくんはA以外の周りの人間のやる事や

若い子達のエネルギーを吸って、あいつは若さを取り戻して楽しくやっとったんと違うんかなって俺は思うで」

この話を聞いて思た

あの時表情には表してくれへんかったけど、Aはあの時間が好きやったんやと

俺と盧笙とAの3人で生きた、何気ない過去の日常

お好み焼きの話もたこ焼きの話も聞けば思い出せるくらい、何気なくて当然として流して来た、本当は奇跡として一瞬を感じないといけない煌めきの一瞬

バランスの保てているようで脆い、淡い日常が続くのを望んでいたのは、きっと俺だけやのうてあいつかて同じやったんや

それを「戻れないもの」にしてまうんはきっとAの方だけやのうて、俺らかて同じ

誰かの力を借りないと、「誰かと一緒に」って言う夢が叶う事はない

簓「…なら、やる事は一個だけやろ

戻るんやで、Aが「好きや」って思てた瞬間に」

そない言うて、俺はAのいる現場に戻る

誰にも足を止めさせんと、俺の足だけで自分を導いて

ジェイド「…！」

フロイド「…人の話聞かねー所までよく似てんじゃん

茎ワカメが生きて帰れるか分からないよって俺言ってやろうと思ったのに」

誰かのそない話を耳に入れる事もなく、俺はただ「未来」という時空を取り戻すために一生懸命に戦う覚悟を決めていた