ウチとアンタと、キミの言の葉8 (ページ10)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:8,705 hit

第284話ページ10

そして行く先で見つけて行くのは濃くなっていく黒い影

その発端がどこにあるのかも、近付いていけば目に見えて分かった

『…？あれヴィル先輩なんとちゃうのん？

何やいつもと様子が違うな…』

何が起きているのか理解はしていないんやけど、何かが起きている言う事だけは目で見てはっきり分かる

ウチの憶測に過ぎんねやけど、何かがヴィル先輩を強くしてまってるんやろなと

『…そのままおるとつまらん思いするだけやで

別嬪さんが勿体ない』

綺麗でいつも高潔なあの女性的な美のあるヴィル先輩がウチは好きや

男としての色々な強みもあるんやろけど、この人を構成しとるんはそれだけやないんやろなって、見れば全部分かるような美の結晶

それを別嬪って褒めるウチを否定して欲しくない

でもそれは今は置いておくにして、今何か様子のおかしいヴィル先輩を止めたい思うんはウチの勝手な我儘である事は知っとる

知っとるけど、それを見たない思うんは人間の性なんと違うやろか

『…分からんけど、何かがおかしなっとるんやよね

止めに入るで』

人の止め方なんてウチには知らない

知らないけど、人を動かすのに必要なのが何なのかは分かる

『…ヴィル！』

ヴィル「…！？」

『こない所で何ワンマンショーやっとるんの？

ゲリラライブなん？折角やからウチも観客に入れてや

…ウチの事笑かしてみて』

ウチはある事を知っとる

人を動かすのに必要なのは温度でもエネルギーでもない

あるいは世界でもない

ウチも含めて、その人の「意向」そのものが結局自分の中で一番強いものなんやって事を知っとる

ヴィル「…」

だからウチは「やる」んやよ

熱を冷まして、ウチでその行動を制御するんや

それが他人にとっての悪になっても、ウチは一番にそれが効く事をウチで証明しとる

『…家一個破壊するだけの力はウチにだってあるんや

ヴィルが睨んだってウチはちっとも怖ないよ、ほな、ウチの事やってみぃ

冷たさに敵う武器は熱でも何でもないわ、ウチの事を上回る冷徹さでウチを裁いてみて』

そない啖呵を切って、ウチはヴィルに向かって飛びつくように助走を付けて一直線に走り出していた