キミとお前と、俺の見ている世界3 (ページ43)

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第136話ページ43

当時のアオイはまだ小学校入学してそんなに時の経っていないガキだ

普通のガキに紛れて、健全な範囲で怪我をするなり少しやんちゃな真似をして先生に怒られるくらいの事があっても良いような歳だ

その元来あって良い時間を潰すのは、そんな欲に塗れた大人達の支配によるもので、アオイはある時自分の知らない場所で世界にレールを敷かれていく

子供の葵「…え？」

葵の母「葵くんもおばあちゃんの家にずっといて嫌にならない？

今度から学校から帰って来たら塾に行ってお勉強しよう？」

子供の葵「…別に、おばあちゃんの家は嫌じゃないよ？

お姉ちゃん身体弱いんでしょ？それはしょうがないじゃん

ピアノもあまり分かってないけど「これは葵くんにとって必要なもの」だっておばあちゃんによく言われてるし、塾に行ってる場合じゃないんじゃない？」

アオイはきっと優しい家庭で育ってはいるから根は優しい人間になっているんだ

そこはありがたい事でもあるが、その優しさが苦しみになってるって自覚できないうちは自分がどんどんすり減ってる事に本人も気付けない

葵の母「そうじゃないの

ピアノを専門的にやるために塾に行くのよ

ドイツ語のお勉強をするの」

子供の葵「…？」

アオイは本来英才教育を受けるべき立ち位置じゃない

普通にやって普通に生きれば普通の幸せが手に入った、それだけで良いはずの人間なんだ

そこに余計なものが足されていって、「自分」っていうものが自覚できない人間に変わっちまった中身の生まれない育てられ方をしたのがこいつの正体って訳で

子供の葵「…よく分かってないけど、ドイツ語をやるとおばあちゃん達が喜ぶの？」

葵の母「…！

…えぇ、喜ぶわ

きっとお姉ちゃんも喜ぶと思うから」

そんな優しい甘言に乗せられたアオイは、自分が望んでいない事を与えられ続ける、まさに「傀儡(人形)」がよく似合う少年に変わっていった