キミとお前と、俺の見ている世界2 (ページ19)

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第64話ページ19

簓side

－－深夜2時、簓の家にて－－

簓「ただいま〜！

…って…誰もおらんねやった

いつもの癖やな」

いつもと同じ調子で夜遅くに大声で帰りを告げる声を上げても、返事をする影はない

Aは盧笙の家で楽しくやれてるんやろか、なんて兄貴の心が多少芽生えて来る

簓「…やっぱりAちゃんのおらん生活はつまらんな

いつもここにおるって分かるから俺も楽しくやれとるんに」

そない言葉を漏らしては、靴を脱いで家に上がっていく

上がって家を歩いても、寝てる影もまだ起きとる影も当然いない

簓「…せっかくの機会やし、Aちゃんの部屋でも探検したるか」

Aが眠っている間はそない思い付きは不謹慎な気がして、部屋が埃まみれになろうがAの部屋を覗く真似は控えていた

けど、今ならそれもええんと違う？

そない心に魔が差して、俺は普段覗き見したりしないAの部屋に勝手に上がる

簓「…うわ、変わらず綺麗やな

前に掃除した時はそないしっかり見てへんかったわ

ものっそい片付いとる…俺の部屋とは訳が違うわ」

俺もAの目覚めがあった後に、最低限の掃除だけはしている

だけどそない深掘りするように部屋をじっと見つめた訳と違うから、今になってAの几帳面さを心で感じ取る

簓「ちゅーか、必要なものしか置いとらんやん

引越しの時にいらんもん整理しとるんかいな…本と服とそれから…

…？」

ふと恐ろしく片付いた部屋の中で、本の間に背表紙の異質な本があるのに目が留まる

簓「…何やろこれ

…？…アルバム…？」

手に取って見ると、それがアルバムやって事に気が付く

簓「…写真でも残しとるんかいな

意外や」

そない言うて開いて見ると、そこには驚くべきもんがあった

簓「…！…これ…」

そこにあるのはAの写っている写真なんかと違くて、全く別の思い出が含まれている

俺と盧笙のコンビ結成時代の公演のビラが、所狭しと何ページにも渡って貼り付けられている

簓「これ、俺らが売れるよりずっと前のやん…

あいつ昔から…それも初期から俺らの事追ってくれとるん？」

まるでファンのような、ビラをこういう形でコレクションしとる影が意外で俺は驚く

簓「…ずっと、応援してくれとったんやな

おおきに」

この場にはおらんAにそない事言うて、心が鈍く温まるような心地がして俺はつい顔を綻ばせていた