第90話 ページ45
ジェイドside
しかし起こったのは「僕に予測できていなかった」結果だった
ジェイド「…!?」
彼女にかけたはずの魔法は、効能を発揮しないで霧散していく
いえ、より正確に言うと「魔法の軌道が彼女という障壁を避けるようにして進む」
かからないで、彼女を避けて、そして宙に舞って消えていく
まるで僕が魔法を無駄撃ちしているだけのような、それか彼女から「そんな事をするだけ無意味である」と言われているような
ジェイド「…どういう事ですか?」
そんな状況に焦燥が増して、言わなくていいはずの言の葉が溢れていく
疑問よりも抱くのは強い嫌悪のようなもので、いらない感情が邪魔をして真相を濁していく
『…?何か変わったん?』
フロイド「…茎ワカメちゃん、今何かやった?」
『…?何にもしてへんけど?』
それはおそらくその言葉の通りなのだろう
多分彼女は「何もしていない」
でも彼女の自覚か、あるいは意識とは無関係に、何かしらの因果が彼女に「魔法をかける」という事を禁じている
いえ、でなければ彼女には「何をされても本質が変わる事のない」という「呪い(まじない)」のようなものが付与されている
それがどこかの誰かにかけられているものか、あるいは彼女が自分にかけている魔法なのかは不明瞭ですが−−−−
フロイド「嘘じゃん、魔法にかけられないの?」
『…そういう事なん?
前から違和感はあったんや、あの時やって何も起こってへんし
それにあの至近距離でウチが何も危害に遭うてへん言うのもそれが要因なんとちゃうのん?』
つまり彼女はその「異質さ」に気付いていたという事か
そしてそれを自分で証明したとでも言うつもりなのでしょうか
僕を焚き付けて利用して、「自分には魔法がかからない」という自己の異常性を腑に落として
それで僕の方がどんな思いに駆られるかなど構う事もしないで−−−−
ジェイド「…それなら、僕は貴女から…」
『…髪はウチが自分で切ったんや
ちょうど短くしたい思てた所やで、より男前に見えるんやしそれで別にええやん』
ジェイド「…ッ…!!」
彼女は僕の気も知らないで勝手な事を言う
フロイド「…茎ワカメちゃん、あのさ」
『…ウチの髪なんて別に大したものともちゃうやろ
あの眼鏡の兄ちゃんもいらん言うてたくらいやし』
彼女は相変わらず笑って、凪いだ顔のまま他人事のようにそう言っていました
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作者名:ユウ | 作成日時:2021年7月31日 13時