キミとお前と、俺の見ている世界

第45話 ページ50

フロイドside


『…せやね、ウチは社会的に非難を浴びる側の人間やから』


茎ワカメは俺に聞いた質問に1を10で返すように言う


『…昔からウチは否定の言葉を浴びる方が機会が多いんよ

肯定の言の葉はウチで聞かれへん』


フロイド「ふーん？

茎ワカメはどんな過去を抱えているの？」


誘導する気で言った訳でもねーんだけど、流れに乗ってそう言えば昔茎ワカメが濁した言葉の色々を深く教えてくれる


『…過去には色々あったで

例えばやけどウチの納得のいかん相手に正直にウチの言葉を言えば、嫌な顔された事とかなぁ』


茎ワカメは初め笑って言うから、そこに「嘘」や「真実と異なる事」が隠れてるのは見え見えで、暴いていけば茎ワカメの輪郭がだんだんぼやけた視点からはっきりとしてくる


フロイド「…そいつに何言ったの？」


『…初めから話すと長いんよ

子供の時の話やけど、ウチが押し付けられた仕事をウチですっぽかしたんよ

ほんで「ウチはウチの仕事やりました、その子はウチに「ええで」って言われてもおらんのに勝手にウチを信じて裏切られただけです」って言うてな…』


茎ワカメの話を聞くと、過去に随分と色々な経験をしている事が分かる


まるで物語を生きるみたいに、自分の経験で今の自分が形成されてるって何となく感じちゃう所があって、そこに意外性があまりないのが少し面白くない


でも逆に言うなら「そうなった」原因は茎ワカメの側に問題があるんじゃなくて、「普通」に生きられない環境を茎ワカメに与えた「世界」が原因で、「本当」の茎ワカメを知ってるのはきっと数少ない人間しかいないんじゃないかって思う


フロイド「…一個聞いて良い？」


『…おん？』


フロイド「茎ワカメの思う、この世界で一番に重要だって思う事って何？」


そう言えば茎ワカメは一度俺に聞く


『…言うてどうするんの？』


フロイド「気になるから聞いてるだけぇ

俺らこの世界の事まだあまりよく分かってないしぃ」


言えば、茎ワカメの口ではこういう答えが聞ける


『…絶えずウチを変える環境で、「ウチ」っていう人間を失う事のないようにウチでしっかり守る事やよ』


フロイド「…ふーん、そっかぁ」


俺は他人行儀に笑う茎ワカメに、「何か俺らは茎ワカメに隠し事をされているんだ」って察して、茎ワカメの「本物」を暴いてやりたくて悪戯心が芽生えるのを実感していた

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