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XIII ページ13

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夜風が心地よい。
酒に浸された火照った身体には、この夏の夜がとても気持ちよかった。

程よく身体にアルコールが回り出した時、海へ行こうと提案したのについて行く。コツコツと不規則になる音は、どことなく同じ場所を歩き続けているような感覚がした。実際はそんなことなく、少しずつ海へと近づいているのだが。

空はすっかり暗くなり、私たちを、かぶき町をじわじわと飲みこみ、その体内で唾液とともに混ぜ合わせて「今日」というものを消化していくのだ。私達は、胃の中の景色なんてちっとも覚えていないまま「明日」をむかえるのだ。人間の人生とは、散るまでそれをループする。どれだけそれが嫌でも、抗うことなんてできず、ただ呆然と息をし続ける。



「ほぉら!ついたよ?」

「明るいのね」


「夜はねぇ、明るいんだよ。カラフルで、綺麗で、キラキラしててぇ、ね、好きでしょ?」


んふふ、といつのものように笑う彼女も負けてないくらいキラキラしている。でも直ぐに、シュンと落ち込むように目線を下に向けた。きゅっと強く握る拳を、たじたじと後ろに隠して笑みを零す。でも、それはなんだか自分に向けているものでは無いかと思ってしまう。



「なぁに、なんかあったの?」


「……ぅ、ん」


するりと、彼がやってくれたのを真似するように彼女の頬を撫でた。添えた私の手に頬をすりすりと押し付けてくるので、きっと彼氏に甘えている時の癖なんだろうな、とか場違いなことを考える。


「話したいなら話せばいいじゃない、ね?」

「Aちゃ、ん。あのさぁ?」


嫌いにならない?


私に向けられた目は酷く濡れていて、ポロポロと宝石のように光る涙は溢れて止まらない。それをこれ物を扱うようにそっと、全てをすくいあげる。彼女の体が暑い。


ならないよ。


そう言って、彼女の額にこつんと額を合わせて、熱を覚ますように温度を共有した。ぎゅっと、捕まえるように抱きしめる彼女のつま先は濡れている。それを見て、私は抱きしめ返した。



海の反対側に広がるキラキラとした宝石達は、見慣れすぎて鬱陶しい。


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湯木(プロフ) - ゆうひさん» 返信有難うございます( ;; )本当の事ですよ!この小説の設定が私の性癖に刺さりすぎて辛いです.......季節の変わり目で風邪の引きやすい季節になってきているのでゆうひさんのお身体に負担がかからないぐらいで更新頑張ってください!応援してます! (2019年5月24日 23時) (レス) id: 8f94a810be (このIDを非表示/違反報告)
ゆうひ(プロフ) - 湯木さん» 飛んできてくれてありがとうございます~!!私が銀魂夢を書き始めた頃からお世話になってる愛しのお友達ちゃんです笑エモさを感じてくれてめちゃくちゃ嬉しいです~!!!!ワー!!本当のことならば幸せです… (2019年5月24日 0時) (レス) id: cee43a9737 (このIDを非表示/違反報告)
湯木(プロフ) - 堕天使さんの所から飛んできました!堕天使さんの作品を読む前に題名が目に付いて後で読もうと思っていたのですがまさか堕天使さんのお友達だったとは!!ほんとにエモくて死にそうです.......。類は友を呼ぶって本当なんですね! (2019年5月24日 0時) (レス) id: 8f94a810be (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆうひ | 作成日時:2019年5月19日 23時

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