八十壱 ページ6
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お妙はおりょうの隣の卓にいた。
坂本の楽しそうな声が耳に入る。
「おりょうちゃん結婚しちょくりぃ」
「もう〜ご冗談を〜」
おりょうはにっこりとその言葉を返す。
坂本の毎回言うこの言葉は本気にもとれず、挨拶のようなものに見えた。
「坂本さん、最近はどうですか?」
「最近のう…まあぼちぼちじゃのう」
坂本は酒を一舐めして、そういえばと続ける。
「商売はぼちぼちやけんど、もっと面白か奴に会うてのう」
そう言ってくくくと笑う。
「あら、どんな人ですか?」
ん?と眉を上げ、おりょうを見る。
そして、おりょうを写すその目線をどこか違うところに移した。
「金剛石じゃあ。それがただの金剛石じゃのうて、とびきり上等なもんぜよ」
「金剛石?…ダイヤモンドってことかしら」
「そうぜよ〜?わしは既に金剛石を持っとんのじゃけども、その金剛石とよう似た、また違う光したもんがのう」
眼鏡の下で、坂本の目は細くなる。
坂本は旨そうに酒を飲んだ。
「小さい癖にわしを振り回すやり手の奴でのう。手に負えん金剛石じゃ。元々持っとった金剛石でさえも手に負えんのに、相当な代物達ぜよ」
「坂本さん、それ人の話、ですよね?商売じゃなくて」
「あっはっはーおりょうちゃんは気にせんでよかぜよ!さ、どんどん飲んじょくれ」
坂本はまた大笑いして、おりょうの話を逸らした。
坂本の細めた目の先には、
「おい、A。飲み過ぎぜよ」
「大丈夫だってえ。飲みたい気分なの」
「そんなに酒飲める方じゃなかろう」
ごくごくとジュースを飲むかの如く酒を飲むAと、それを止める陸奥。
勢いよく飲み干し、ふうと息を吐くAと同時に、坂本の目はまた細くなる。
(金剛石ってもしかして)
妙はおりょう達の卓に行くよう、促された。
おりょうと入れ替わりで、坂本の卓につく。
「久々じゃのう。眼鏡君とこの姉ちゃん」
「お久しぶりです。坂本さん」
そう言って坂本に酌をした。
へらへらとする坂本に、
「今日は何故お一人ではなく、あの二人を連れて?」
とA達の卓を見ながら尋ねた。
坂本はふっと笑い、
「大人は呑める量知っとかんなのう」
とまた酒を一口。
Aは頬を赤くしながらちらちらと坂本を見ていて。
(やっぱり金剛石ってこの二人のことね)
「坂本さんって見かけによらず悪い人ね」
お妙がそう言えば、坂本は嬉しそうに顎を撫でた。
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Nattu(プロフ) - connyさん» connyサン!再度コメントありがとうございます。嬉しいです^^いつの間にか4作目で、私自身いつ終わるんだろこれ…状態なので何シーズン続くか未定です笑 これからも温かく見守っていただけると幸いです* 長きに渡るこの作品を読んで下さり誠にありがとうございます (2021年3月3日 12時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
conny(プロフ) - シリーズ4個目…本当にすごいです…!続き楽しみにしてます!頑張ってください! (2021年3月3日 0時) (レス) id: 712cd20bd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2021年2月25日 21時