#番外編 ページ34
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「…ぎ、銀時さん」
「んー?」
「あ、の」
夜中に突然訪ねてきたかと思うと、ぎゅう、と後ろから抱きしめられたまま数分。
さっきから自分の心臓があまりにも速く脈打っていて、落ち着かない。
普段よりも彼が積極的に距離を縮めてくるのは、恐らくはお酒のせいだと思う。
微かに鼻を掠めるアルコールと銀時さんの香り。
私まで酔ってしまいそうだ。
「……ふは、Aちゃん緊張してる?」
「…えっ、と」
「…かわいい、ほんとに」
(お酒の力って凄い、)
くるりと私の体の向きを変えさせると、ぽす、と彼の腕に閉じ込められた。
銀時さんの温もりと、心臓の音。
「……わかる?俺の心臓も速いの」
「……はい、」
「っ、はぁー、離したくねェ、」
普段はこんなに甘えられることがないから、いつもと少し違う彼の姿には驚いたものの、私が少しでも癒やしてあげられているのならと思うと嬉しい。
銀時さんは、何でもかんでも一人で背負いこもうとする。
それは彼の根底にある優しさから来るものだけれど、心配になる要素でもあった。
とんとん、と優しく彼の背中を擦る。
すると彼は僅かに、抱きしめる腕を強めて。
はぁ、とまた小さく息をついた。
「……ごめん、キスしてもいい?」
「…聞くんですか、そんなこと」
私が思わず笑うと、彼も眉を下げて笑った。
どちらからともなく、触れた唇。
そのまま銀時さんは私の首元に顔を埋める。
銀色の癖毛がくすぐったい。
「……ぜってー護るから、」
「……銀時さん、?」
「……、」
すぅすぅと小さな寝息。
(……寝ちゃった)
あの様子からすると、相当飲んでいたようだし、眠気も限界に達していたのだろう。
私は彼を起こさないようにそっと寝かせると、毛布を引っ張ってきてすぐ隣に横になった。
固くて冷たい床は、どう考えても明日の朝体が痛くなるだろうと思う。
しかしそれもいいか、と思うほどには、今の時間が幸せで。
大人二人が入るには少し小さい毛布。
だけど、彼に近づける良い口実になるような気がした。
(…たまにはこんな日があってもいいよね、)
「……おやすみなさい、銀時さん」
彼の癖毛を撫でて、電気を消した。
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日向(プロフ) - 由菜君さん» わああ嬉しいです…!!!キュンキュンして頂けて良かったです!ありがとうございました…! (2021年2月12日 13時) (レス) id: 518bab79dd (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 381さん» そう言っていただけてとっても嬉しいです!!こちらこそ素敵なコメントありがとうございました…! (2021年2月12日 13時) (レス) id: 518bab79dd (このIDを非表示/違反報告)
由菜君 - めちゃくちゃキュンキュンしました、、!すっごく良かったです! (2021年2月9日 21時) (レス) id: dc79ac4bfc (このIDを非表示/違反報告)
381 - 神楽ちゃんがおもしろくて、、、一気に読ませていただきました!とっても素敵な作品をありがとうございますッ! (2021年1月25日 21時) (レス) id: 664ca7d814 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - Kさん» まさにそういったものが描けたらと思って作った作品なので、そう言って頂けて本当に本当に嬉しいです…!ドキドキさせられて良かったです!こちらこそこの作品に出逢って頂いてありがとうございました…! (2021年1月23日 22時) (レス) id: 518bab79dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:日向 | 作成日時:2020年11月1日 19時