立花彩、歌い手始めました。【KZ】【utit】

さんじゅうなな ページ37

彩side



私達は家へと戻ってきた。やはり人間だからかお腹が空いてくるものだ。


「楽しかった〜」
「また行こうな!!」

そう嬉しそうに言った坂田さんの言葉の意味を考えた。


「また、か……」


今日は本当に楽しかった。楽しかったんだよ。
もう一度行けるならとっても嬉しい事だ。

でも、だから、だから怖い。
私はこんなに楽しんでいていいの？
こんなに幸せになっていいの？

そう思いたくなくても思ってしまう。


私は幸せになる事が、怖い。
自分を見失ってしまいそうだから。


「彩ちゃん……？」


考えていると目の前にいきなり顔が現れた。


「うわあぁっ!!」


それはまふくんの顔だった。
私の声に、そんなにびっくりしなくてもと言われた。


「どうかしたの？」


えっ…？


「ボーッとしてたから。何かあったの？」
「な、何でもないです」


必死に誤魔化すも、こういう時はとても鋭い彼には見抜かれてしまった。


「嘘だ、嘘でしょ？」
「……だって言ったら、迷惑になってしまうので、」


迷惑掛けられないよ、これ以上。
そう思って俯いたけれど、彼はそんな風には言わなかった。



「いいから言ってみてよ。本当に迷惑かなんて聞いてみなきゃ分からないよ」





その言葉を、私は信じたいと思った。

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