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「よっすー」
『キヨさんお久しぶりですね、
わざわざお迎えありがとうございます』
キヨさんの軽い挨拶とは
真逆の堅苦しい私の挨拶。
LINEで話す時でさえそんな感じの私に
お前!そろそろタメにしろって!と
ちょくちょくツッコミが入る。
でも今日は何か違うみたい。
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「ん、まぁとりあえず店入ったら
いろいろ話そうぜ?ほら、乗った乗った」
私のことを心配してくれているのかなと
思うのはあまりにも都合がいいけれど、
キヨさんにしては分かりやすく、
下手な作り笑いだった。
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『ありがとうございます、
よろしくお願いします』
私が助手席に乗り、
シートベルトをつけたことを確認すると
動き出す車。
お店につくまでの道のりで、
キヨさんはいつも通り
くだらないトークをしてくれた。
それが何だか心地良かった。
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お店に入ると個室に案内され、
席に着くやいなや
キヨさんは塩キャベツと牛タンを頼んでいた。
『牛タン好きなんですね』
「おー、一番うめぇだろ、牛タン」
牛タンを焼いている間に
塩キャベツをずーっと食べてる。
……なんか、小動物に見えてきたな、
体は全然小さくないけど。
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そういえば、私、食欲なくて
ろくなもの食べてなかったけど
……急に焼肉食べれんのかな。
なんて不安を感じていたが、
お肉はちゃんと美味しかったし、
めちゃくちゃ食べた。
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1人でいるとどうしても、
ご飯なんて別にまあ良いやってなるのに
誰かと食べるご飯は美味しくて仕方ない。
………坂田さんはご飯食べれてるかな。
ちゃんと寝れてるのかな。
ちゃんと心を休められてるかな。
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「………そんな顔すんなって、
とりあえずほら、肉食え」
『食べてますって』
「まだまだ食えるしょ?」
『うーん、今7分目ってとこですね』
「早!!!」
『キヨさんは?』
「うーん、9分目」
『私よりいってるじゃないですか』
「俺のが食ってんだろ!」
『ほぼ一緒のペースですーー』
「いーや、俺のが3枚くらい多いべ?」
『3枚?それ何て言うか知ってます?キヨさん
それね、誤差って言うんです』
「はー?!誤差じゃねえ!」
『……終わりどこですか?』
「それな。世界一しょうもねえ言い争いだわ」
しょうもない、と言いながら
さっきとは違った、安心したような笑みを浮かべ
「なぁA、今楽しいか?」
と問いかけてきた。
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純白 - めちゃめちゃに好きです。続き楽しみにしてます。頑張ってください (12月28日 18時) (レス) @page32 id: cf53fa4fa8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やまだ | 作成日時:2023年7月4日 4時