9:癖 ページ10
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_____チュンチュン、
子鳥のさえずりを目覚まし替わりに起きると、外が何やら騒がしかった。
オーライ、オーライという声がしている。
あぁ、引越し業者が来たんだな、なんて考える俺は自分でも驚く程に冷静だった。
昨日、Aを好きじゃなくなると誓ったばかりだからか、Aに対する想いは少し弱まっている。
「やっと起きたんですね、銀さん」
「もうAが行くってのにいつまで寝てるアルか、このプー太郎が!」
神楽にバシンっと強めに肩を叩かれて、鈍い痛みが走った。
まぁ、これは慣れたもんだから特に反応もしない。
「もう行くのか、早ぇな」
人事見たくそう言い、洗面所へ向かう。
口からヨダレがでていて、乾いたためあとがくっきりと残っている。
昨日のAみたいだ、なんて。
「なんでもAに結びつける癖、治んねぇかなあ」
もう好きじゃなくなるって決めたのにそんな癖ついてちゃ厄介でしかない。
早く忘れられるようにしねぇとって思うが、逆に焦るばかりで忘れられなさそうだ。
歯を磨いて、顔洗って、ちょっとカッコつけるためにワックスつけて、いつもの着流しを着る。
洗面所から出ると、どうやらみんな外にいるみたいだ。
黒のブーツをはいて慌てて階段を駆け下りると、もうAが車に乗りかけている時だった。
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作者名:しゃしゃねこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=80052c2ded6763cad9b2f669385f5dbf...
作成日時:2018年6月30日 19時