6:情けない ページ7
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すっかり辺りは暗くなり、今は下の階のババアの店でAのお別れ会を開いているところだ。
ババアはAがいなくなることに大して咽び泣いている。それをAが慰めているというなんとも異様な光景。ババアが泣くだなんて珍しい。
それだけ、ババアにとってAが大切で親身な存在だったんだと思わされた瞬間でもあった。
そんなAとババアを尻目に日本酒を煽った。
乾いた喉に通る日本酒はそんなに辛口じゃないのにとても辛く感じる。
何杯か飲んだ後、未だババアを慰めているAを見る。
微笑むAは初めて会った時から何年経っても綺麗で、優しくて、手離したくない。
明日、あと4時間もすれば明日が来る。
あと、数時間もすれば、Aはいなくなる。
Aと、一生会えなくなるかもしれない。
「なんで、行っちまうんだよ…」
手に入れることの出来なかった俺はただただ後悔の念を漏らすのみ。
我ながら情けないと思う。
そんな自分の弱い部分を、惨めな部分を今はどうしようもないぐらいかき消したくて、日本酒をまた何杯も何杯も飲んだ。
やっぱり日本酒は、辛くてたまらなかった。
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作者名:しゃしゃねこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=80052c2ded6763cad9b2f669385f5dbf...
作成日時:2018年6月30日 19時