2:写真の中 ページ3
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彼女の引越しを手伝うため、俺は部屋に入り、掃除をすることになった。
何度か襖の間から部屋の中を見たことはあるものの、部屋に入るのは初めてのことで少し緊張した。
中は女の子の部屋、という感じではないが割と物は多い。
机には写真立てが置いてあり、額縁には俺たち万事屋4人と1匹の写真や、婚約者であろう男との写真もあった。
あぁ、モヤモヤする。
Aの隣がこんな男じゃなくて、俺だったらよかったのに。
だけど男の隣にいるのは幸せそうな顔をしたAがいる。
こんな幸せそうな顔、俺は見たことがない。
「好きなやつだけに見せる表情ってやつね…」
この表情は俺に向けられたものではない。
そしてこの表情、一生俺に向けられることはないだろう。
だけどこの幸せそうな表情。
好きな人が幸せなのはこれほどない幸せだが、それと同時に悲しさや虚しさが胸につっかえる。
俺たちはもう、一緒にいれないんだってことを思い知らされたみたいで。
手を伸ばせばすぐそばにいるのに、後数時間もすればAはもういないんだ。
もうAは俺たちのじゃなくて、別の誰かのになってしまうのはすごく辛くて、思うだけでも胸が張り裂けそうで堪らないんだ。
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作者名:しゃしゃねこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=80052c2ded6763cad9b2f669385f5dbf...
作成日時:2018年6月30日 19時