10:ありのままの気持ちを ページ11
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乗りかけた車からAと目が合う。
目が合っただけなのに胸がドキリと音を立てるんだ。
あぁ、嫌な音だ。早くこの胸の高鳴りが無くなってくれたら俺も、Aも幸せになれるのに。
「銀時!」
乗りかけた車から降りたA。
そして俺の元へ走ってきて、ぎゅっと俺に抱きついた。
「ちょ、A、なにしてんだ」
「最後だもん、だから許してよ」
ね、お願い?
俺を見上げるような視線で頼むA。
やめろ、そんな目で見ないでくれ。
そんな目で見られたら、忘れられなくなるから。
「早く離せ、な?」
「どうして?最後なんだよ、最後ぐらい、いいでしょ」
最後になるにつれ、声が小さくなって言ったAの言葉。
少しでも寂しいと思ってくれているのか、そう思うとじわりと胸が暖かくなった。
「わーったよ、最後だもんな。めいいっぱい抱きついとけ」
「うぅ、銀時ぃぃ…!」
そう俺が許した途端、さっきと比にならないぐらい強く抱きしめてきたA。
そんなAの目からは大粒の涙が零れ落ちている。
俺だって、泣きてえのに。
うぅ、とむせび泣くA。
せっかく可愛い顔が台無しだ、なんて言うとうるさい!と怒られてしまう。
こんなやり取りも、最後なんだと思うと胸が痛む。
しばらくすると、Aは俺からゆっくりと離れて、泣きすぎてパンパンに腫らした目を俺の目と合わせた。
「銀時、今まで私といてくれてありがとう。
銀時は私の中で1番大切な友達だよ、それは今も昔も、きっとこれからも変わらない。
こんな私と、いつも一緒にいてくれてありがとう、愛してるよ」
Aは最後にへらっと笑って、また涙を流した。
「ありがとうな。俺も、お前が1番大切な人だ、幸せになれよ」
そう俺が告げるとAは満足したのか、一度降りた車にもう一度乗った。
エンジンを蒸す音がする。
もうAと離れるというのを嫌でも叩きつけられる。
そしてゆっくりと車が動き出した。
窓からAは顔を出して、手をブンブンと振っている。
神楽も、新八も、ババアもみんながAへのメッセージを叫んでいる。
だから、俺も言おう。
「幸せになれよ!」
精一杯の感謝と愛の気持ちを込めて。
幸せに
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作者名:しゃしゃねこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=80052c2ded6763cad9b2f669385f5dbf...
作成日時:2018年6月30日 19時