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「神野の事件に巻き込まれた。崩れてきたビルに押し潰されたの。目の前で見た」
淡々と述べられた言葉を受け入れるのには少し時間がかかった。
不謹慎ながら一番はじめに頭に浮かんだのはハルちゃんが嘘を言っているのではないかということ。
けど彼女の目から溢れる涙が真実であることを物語っていた。
「Aもあの事件に関わってたんでしょ…？もう私が何を言いたいのかわかるよね…！？」
徐々に語気を強めるハルちゃんに、私は立ち尽くすことしかできない。
けれど罪悪感に襲われることはなかった。
「Aのせいで2人は死んだ！人殺し！！」
「……」
「だいたいあんな手紙だけで納得出来るわけないでしょ！？」
自分でも意外なことに、これだけ言われても悲しいとすら思わなかった。
とっくに私の中では過去の人たちで、連合のみんなと過ごすうちに家族や幼馴染みのことなどすっかりどうでもよくなっていたことに気づいた。
私はこんなに冷酷な人間だっただろうか。
ハルちゃんはしばらくずっと何かを叫んでいたけど、全てが他人事のように思えてしまって同情も罪悪感も微塵も湧いてこない。
「…あぁ、ごめん。ごめんね…こんなこと言いに来たんじゃないのに…」
一通り溜まっていたものを吐き出したハルちゃんはさっきまでの罵詈雑言とは打って変わって、涙ながらに謝罪の言葉を口にし出す。
「Aは悪くないよ…だってほら…Aってすごい恋愛音痴だったもんね」
泣きながらも昔話をするように笑う彼女の姿はまさに情緒不安定。
どう見ても正常な人間ではなかった。
「超がつくほど真面目で素直で…騙されやすくて…」
短期間に色々ありすぎてまともな精神状態でなくなってしまったのだろう。
もっともその一因が私自身なのだけれど。
「だから、誑かされちゃったんでしょ？死柄木弔に」
「…なるほど」
これが彼女から放たれる弔さんへの異常な殺気の正体か。
「全部あの男のせいだ…！」
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作者名：さかさま | 作成日時：2022年4月20日 22時
