218 ページ25
「っ…」
「弔さん！」
集会が終わって裏に戻った瞬間、弔さんは杖をつきながらもバランスを崩して床に倒れかけてしまった。
咄嗟に肩を支えに入って転倒は免れたが覗き込んだ表情は明るくない。
「まだ痛みますか？」
「少し…」
「お部屋までご一緒します」
今も相当無理をしているのだろう、痛み止めの薬を飲むためにも一刻も早く部屋に戻って休んでもらおうと肩を貸す。
2人きりでエレベーターに乗り込みそのまま弔さんの自室がある山荘の最上階へ。
「では、ちゃんと薬飲んでくださいね」
弔さんの部屋の前まで送り届けて、今朝のことや今後4ヶ月間の話でどこか気まずい私は早々に自分の部屋に戻ろうと踵を返そうとした。
「…ボタン外すの、手伝え」
けれど弔さんにそう言って呼び止められて、たしかに1人で着替えるのはまた大変だろうと納得し部屋にお邪魔した。
流石弔さんの部屋は最高指導者仕様、私の部屋よりも広くて豪華で窓からの景色も綺麗でいかにも高級ホテルのスイートルームといった内装だった。
キングサイズのベッドに腰掛け一息ついた弔さんにひとまずお水と薬を用意しようとすると、襟首を引っ張られて弔さんの隣に腰を下ろしてしまった。
「あの、お薬を……どうしたんですか？」
「…お前が素直に従うと思わなかった」
一見成り立っていない会話。
だけど俯いたままの弔さんが話しているのは先ほどの4ヶ月の件についてだろう。
「もーまたその話ですか？私は忠犬ですよ！弔さんの言いつけはしっかり守りますから！」
できればこの話はもうしたくなかったのだけれど、私は努めていつも通りに振る舞った。
ただ弔さんに安心してほしくて。けど、
「じゃあ…忠犬としてじゃなく、俺の恋人として…どう思った？」
「え…」
私の本心を見透かしたような問いと、どこか寂しそうに見つめる瞳に取り繕っていたものが壊された気がした。
「俺は寂しい。お前と離れたくない。そう思ったけど」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 470人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さかさま | 作成日時：2022年4月20日 22時
