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「弔さーん！準備できましたかー？」
退院予定日当日の朝。
この一週間ですっかり通い慣れてしまった弔さんの病室の扉をガラリと開くと、そこには助けを求めるような縋るような目線でこちらを見る弔さんの姿があった。
「…ボタンがとめられない」
患者衣から着替えたらしく、下は黒のスラックスで上には白いワイシャツを羽織っているもののボタンが閉められないのか前が開いたまま。
左手の義指にはまだ慣れていないみたいだし右手も包帯ぐるぐる巻きだから仕方ないのだけれど、たかがボタンに音を上げて困った顔をしている弔さんがかわいくて笑ってしまった。
「…笑うな」
「ごめんなさい…可愛らしくて、つい…」
私が来る前まで一人で試行錯誤しながら頑張っていたのだと思うとやっぱりかわいい。
本格的に不機嫌になってしまう前にと、不服そうにこちらを見上げる弔さんにそっと手を伸ばし上から順にボタンをとめていく。
男性ものだから左前なのが新鮮だなとかぼんやり思いつつ手を動かしているとあることに気づいた。
「…あれ？なんか…逞しくなりました？」
弔さんといえば服の上からでもわかるガリヒョロっぷりで、ところどころ骨が浮き出るくらいには細かったのに。
筋肉だって少しはあったけど必要最低限といった感じだったのに。
ぺろりとワイシャツを捲るとなんということでしょう、そこには立派に割れた腹筋が。
「え、嘘っ！？いつのまに！？」
「そりゃぁ…あれだけ戦っていれば嫌でもつくだろ」
なんとマキアと戦いっぱなしだったこの1ヶ月半の間に弔さんの体つきはもうガリヒョロなんて呼べないくらいにしっかりと筋肉がついていた。
よく見れば肩周りも以前よりがっしりとしているし腕もより筋肉質になっている。
「すごい…」
あまりの劇的な変化に感動し、ボタンそっちのけでぺたぺたと体中の筋肉を触る。
マキアとの戦闘中毎日見ていたからこそ徐々に変化していく様に気が付かなかった。
先日治療室に運ばれていったときは酷い大怪我にショックを受けてそれどころではなかったし。
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作者名：さかさま | 作成日時：2022年4月20日 22時
